KUSARI仲間の作品情報 〜平成25年 →平成26年〜はこちら KUSARIの年鑑掲載作品、オフ会作品をはじめ、KUSARI仲間が連句界で活躍している作品情報をお届けします。KUSARIの仲間が捌き、主な連衆として参加している作品です。別の結社(グループ名)でだされている場合もあります。(連衆にはKUSARIにはいっていらっしゃらない方も少しまじっている場合もありす)捌き名、作者名も、ハンドルネーム? ペンネーム? ご本名? いろんな名をもってらっしゃる方もありますよ。誰かしら? 誰かしら? でも、KUSARIでどこかでお見かけするかたがほとんどですよ。(入選等作品漏れていることも多いとおもいます。お送りくだされば載せます。但し必ず捌きの方の了承を得てくださいね。連句界では作品の著作権は捌きに属しますので。) |
◆平成25(2013)年国民文化祭やまなし文芸祭「連句の祭典」大会
入選 半歌仙「ヤルキスイッチ」の巻 捌 石川 葵 誤作動のヤルキスイッチめかり時 鳥海唯 初蚊の止まる太き二の腕 石川葵 春袷色あざやかに並ぶらん 佐藤ふさ子 ハミングやがて輪唱となる 唯 補習終えいつもの月と友の影 葵 投げてほお張る炒った底豆 ふ ウ 決断がつかないままに濁酒呑み 唯 至極の玉か松園の美女 葵 後れ髪やさしく直す男指 ふ 息白くして甘い囁き 唯 クリスマス商戦に沸くニューヨーク 葵 若き日の父アルバムの中 ふ 月の吾子その名に付ける夏の文字 唯 河童の淵に漣が立つ 葵 道標誰が抜いたか迷い旅 ふ すっからかんの財布お気楽 唯 師の諭す発菩提心花しずか 葵 四方の山々渡る囀 ふ 平成24年4月16日起首5月6日満尾 文音 |
入選 半歌仙 「ひよも桜の」 の巻 衆議判 地に垂れてひよも桜の守る墓 慶子 風の遊べる春の村里 芳梅 巣立鳥行こか止めよか迷うらん 明子 交通指導おばさんの笑み 慶 自販機のならぶ公園白い月 芳 ひと休みするつくつくぼうし 明 ウ地歌舞伎のはねて火照りの冷めやらず 慶 捨てっちまおか良妻の顔 芳 向き合って夫婦茶碗で飲む渋茶 明 記念切手にハイデルベルク 慶 青嵐散策ツアー大流行り 芳 株価上がってちょっと一息 明 次郎長の末裔なるを誇らかに 慶 サッカー場より仰ぐ富士山 芳 凍月を駆けぬけてゆく銀狐 明 方位磁石のNに故郷 慶 まだ熱き餅花捻り飾りたて 明 消防出初め若衆の声 芳 平成二十五年四月十二日首 五月八日尾 文音 |
入選 半歌仙「春二番」の巻 捌 石川 葵 犬の鼻に陽の当たりをり春二番 谷本守枝 立雛飾る姉と妹 稲垣渥子 気まま旅げんげの花に誘はれて 石川葵 リュックサックに入れるオカリナ 渥 未来めく高層ビルに月のぼり 長坂節子 つづれさせ鳴く狭き地下道 枝 ウ 粗塩とうるか肴に呑む濁酒 節 故郷に残すあの人のこと 渥 海碧く紅さす指は美しく 葵 イザナギイザナミ恋の先駆者 枝 檀尻に老いも若きも阿呆になり 冨田八穂 語呂の宜しきナンバープレート 渥 除夜の月降圧剤のひとつ増え 枝 めがね拭きつつ毛糸編む母 穂 幸せの基準問ひかけ足るを知る 仝 何処で違へた減反政策 渥 花舞台名脇役は寡黙にて 葵 残る雁ゆく遠き山脈 枝 平成二十五年二月二十六日 首尾 於 豊田市青少年センター |
入選 半歌仙「いぬふぐり」の巻 捌 渡辺洋子 いぬふぐり笑い出したる青さかな 芙美 畔塗りの音響く山峡 克彦 開け放つ窓より春の風入れて 絢子 駅長さんがコーヒーを挽く 藍 パソコンのキー跳んでゆくかまどうま 々 名残の月の覗く屋根裏 洋 ウ 落鮎を骨酒にして独りなり 克 ちくりと痛む胸の奥底 絢 こっそりとふたまたかけた金曜日 洋 素数ひたすら並ぶ黒板 芙 アベノミクスとか割り切れぬことばかり 藍 えいと面打ち寒稽古する 芙 チャルメラの遠く近くに凍ての月 克 連休終わり鬱の始まり 藍 巴里祭の市場巡りのバスに乗る 芙 頂けますかそのチョコレート 絢 母さんの卒寿を祝う花衣 洋 みんなで飛ばす夢の風船 執筆 平成二十五年三月十二日首尾 於 桜花学園本部三〇二教室 |
◆平成25(2013)年『連句年鑑』(連句協会 発行)webめぎつね座
KUSARI「たのしい三句たち」 1月1日(日) (No. 102102) 初春の夢紡ぐ魔女たち あずき 富士山を真っ赤に染めて陽は昇る ザリ よいこといっぱいありますように おなすさん 3月7日(水) (No. 103219) もう少し君と長生きしましょうか みのり 地上に降りたノアの方舟 カンちゃん 団塊という塊が行進す 天球 3月8日(木) (No. 103236) メイン料理はまだ来ないのか しゅぴZ アッラーと夕焼け色のカルカッタ 不用之助 風になりたい雲になりたい カンちゃん 3月28日(水) (No. 103519) 揚雲雀地球が青く見えるまで 兎 アインシュタインロケットに乗る いずみ この前の妻との喧嘩気になって ザリ 3月30日(金) (No. 103545) アンカーがスピード上げて追いついた ゴロ 年休チェックしてる死神 小町 付き合いも程々がいい縄のれん たつみ 5月06日(日) (No. 104176) 津波も怖い竜巻もまた 美句志 一寸の先もわからぬこの命 彗 蜻蛉の羽は美しく透け ザリ 5月11日(金) (No. 104247) 竹藪の雀のお宿この辺り 不用之助 月の出近い風のざわめき 鶫 何処よりきたりし君は我が子なり ちいばば 6月11日(月) (No. 104672) 西の風です雨になりそう 合 何もかも灰色君を見送って 唯 蟇交みおり尼寺の裏 兎 6月16日(土) (No. 104746) DNAをコピーし直す 和 AKBどの子も同じ顔に見え ひわ 一番赤い苺摘み取る いずみ 6月18日(月) (No. 104782) 独りぼっちのあんたとあたし 唯 ユーロ圏離脱するのかしないのか 蕗 ルール違反の後だしじゃんけん あずき 7月1日(日) (No. 104957) カラメルのプリンプルプル銀の匙 かよねこ リンゴの花を髪のかざしに とけた 連なって 白鳥帰る青い空 ばらずし |
7月15日(日) (No.
105273) ペンギンが小走りしてる幼稚園 ザリ 皇帝陛下今日も退屈 美句志 暑すぎる!幽霊一人連れてこい コロン 7月20日(金) (No. 105353 ) お菊さん大あくびする井戸の中 あずき 初物西瓜糖度十一 麦 くれぐれも甘い話にご用心 ひわ 7月22日(日) (No. 105398) 愛だの恋だのいつの話よ 唯 今あなた大切なこと風呂掃除 ザリ 地獄もメンテナンスが必要 あおゆき 8月5日(日) (No.105663) 白川郷に雪は静かに降り積もり ザリ あれは私の葬列の黒 あおゆき 存在が消えてる今の現住所 少年E 10月5日(金) (No. 106600) おでんの鍋で蒟蒻が揺れ コロン △と□と〇が勢ぞろい 美句志 清水一家は富士をバックに 天球 10月08日(土) (No. 110642) 仲間見る目は凄く正確 ちいばば ハングリーなぼくに林檎をくれたひと あづさ 秋の名残を求めクリック キリマンジャロ 10月16日(火) (No. 106794) ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソと 不用之助 着々と原発ムラの立て直し 藍 冬を越せるか虫の抜け殻 天球 10月18日(木) (No. 106849) 妙薬のある訳でなし万病の 少年E 夫の輪廻を待つ不死の妻 ゆづ ALASあなたどうしてあなたは蛙なの 藍 10月26日(金) (No. 106978) 治水工事は遅々と進まず ザリ そのむかし鯀の息子に禹のありて いずみ 英傑もみな土となりしか タヌ公 12月16日(日) (No. 107715) お母さん僕は将来大臣に 氷心 頭が右に傾き過ぎよ あおゆき 体勢の揺らぐ一瞬メンで勝ち ばび 12月21日(金) (No. 107557) 冬至かと窓の雪みる月あかり ゆめ 何れが先と知らぬ老い先 合 力走の周回遅れに大拍手 コロン 平成二十四(2012)年1月1日〜12月31日 (bP02102〜bP07888より抜粋) |
◆2013年 「南栃市いなみ全国連句大会2013」
*浪化賞 歌仙「寒椿」の巻 捌 石川 葵
平成25年1月22日首尾 於 豊田市青少年センター |
*入選* 歌仙 「千代の春」の巻 捌 武藤美恵子
於 豊田市竜神交流館 |
◆平成24年『連句年鑑』2012(連句協会 発行)webめぎつね座
「ことしの三句たち」 1月1日(土) (No.95602) 幸を願わん千代のこの春 あずき 花びらに陽を包むごと福寿草 ザリ 遊びせんとやこだまする声 藍 1月3日(月) (No.95638) ファルーカ乗せてナイル滔々 風 風の色探しに旅に来たけれど ザリ 詩集一冊ポケットの中 蕗 2月3日(木) (No.96252) 林檎を齧る君の白い歯 美句志 草紅葉言葉は何て薄っぺら あずき 消去しますか保存しますか あづさ 2月8日(火) (No.96339) 国技とは言えぬ姿に成り果てて キリマンジャロ 美少女の目に星がいっぱい 麦 颯爽とリボンの騎士が現れる 兎 2月4日(金) (No.96261) マックからウインドウズにする浮気 キリマンジャロ 侮るなかれ妻の六感 ゴロ 玄関が今日はきちんとしすぎてる たつみ 3月8日(火) (No.96868) リンゴかじってパタと倒れて 天球 湾岸署捜査1課の逮捕状 のら きみの虜になって幸せ ひわ 3月11日(金) (No.96942) 地震に続いて津波押し寄せ キリマンジャロ もう一度ガスの元栓確認を ザリ 初めて握るこんなおにぎり 唯 3月12日(土) (No.96949) 夜中まで阿鼻叫喚にうなされて とけた ロザリオを繰るシスターの影 たつみ つながった携帯に言うありがとう 唯 3月23日(水) (No.97090) 氷の女王呪う生い立ち ふさ子 「めでたし」で終わる長〜い物語 田中雅子 地震治まり原発も無し ばらずし 3月29日(火) (No.97146) 蕾伝える春はもうそこ 天球 ゆうべ見た悲しい夢がまだ残り 藍 自分にできる事を問ふ日々 伊都 4月4日(月) (No.97264) ネオンが招くビヤーガーデン とけた よたよたと飛行できないメタボな蚊 ザリ 小さな声でプロポーズされ 天球 |
5月10日(火) (No.97823) 湧き上がる熱い想いをキャンバスに おなすさん 才能という難を抱える タヌ公 君は鷹それとも鳶どっちかな あずき 5月28日((土) (No.98200) レコードの針磨り減っていて ばらずし アナログの世界は狭くなりにけり 和 歩道を歩く赤い雨傘 R 5月29日(日) (No.98256) 心を決めてなせる告白 ハナ 注水の中断などはしてません キリマンジャロ まだ鳴りやまぬ警報機あり 桂 8月3日(水) (No.99597) 去年聞いた蝉今年聞く蝉の声 藍 生きているから連句するんだ ザリ 大空に思いきり書く好きの文字 不用之助 9月4日(日) (No.99998) 悩んだ日々の重さ懐かし 唯 友がみな微笑んでいる花の下 氷心 紡ぐKUSARIに10万の詩 ザリ 9月8日(木) (No.100144) 月に浮んだ太陽の船 氷心 謎かけをする神獣がふりむいて 雨乞小町 信じる事こそ真実の愛 ひわ 9月21日(水) (No.100371) うたた寝の覚めてもの哀しい日暮れ 鶫 することいっぱい後期高齢 ばらずし ランチして脱原発のデモに行く 蕗 10月6日(木) (No.100612) 愛のかけらも光失くして ひわ ニュートリノ誰とも衝突したくない あづさ ニコヤカ仮面つけて一日 唯 11月26日(土) (No.101454) 追い風吹かぬ巨大帆船 カンちゃん 海図なき旅をみちびく星ありて いずみ 淋しい吾が貰う冬バラ かよねこ 12月21日(水) (No.101903) ダルビッシュ深呼吸して第一球 ふさ子 カレーライスかライスカレーか 伊都 炎昼のインドでわしも考えた 誠 12月13日(火) (No.101762) 挨拶文に馴れぬ病名 天球 出くわした幸も不幸も受けてたつ ちいばば 漂流の果て見えた島影 天球 平成二十三年一月一日〜十二月三十一日 (No.95602ー 102101より抜粋) 於 HP矢崎藍の連句わーるど |
◆大阪天満宮第六回浪速の芭蕉祭
入選 歌仙「鉄砲狭間」の巻 両吟 鉄砲狭間狙えばみどりなす信濃 由川慶子 石段廻る麦の秋風 間瀬芙美 蝉の殻子のポケットに仕舞われて 慶 お使い籠に描いた食パン 芙 オハヨウと鸚鵡が叫ぶ昼の月 慶 体育の日はいつも晴れ晴れ 芙 ウ初恋の予感かすかに早生ミカン 慶 正座の君のマジなお茶席 芙 目の海にふるさとの雲浮かびたる 慶 自然遺産になりし泰山 芙 狼の遠吠え聞きし老大樹 慶 凍て月の乗るオート三輪 芙 地理学者方位磁石を持ち歩き 慶 祖母の代からみんな福耳 芙 お供えのぼた餅大小さまざまに 慶 雪解けを待ち家出しようか 芙 自由追いモスクワ発の花の旅 慶 フラッグばかり続く街並 芙 |
ナオ市場から馬引く子等の声ひびく 々 玉ねぎを売り買った小麦粉 慶 はみ出したサングラスから太い眉 芙 隠しカメラが暴くアリバイ 慶 しあわせとふしあわせ付きマイホーム 芙 絹の絨毯沁みのぽつぽつ 慶 カルメラの甘い香りの思い出と 芙 ハマで生まれてハマで老いゆく 慶 空のいろ海のいろ混ぜ紺碧に 芙 片肺飛行なれど着陸 慶 両の手で月を揚げている役者 芙 飲まずとも酔う重陽の酒 慶 ナウ 塩焼きの鱸はピンと尾をはねて 芙 井戸掘りにして子沢山なり 慶 お気に入りチェックのシュシュは箱の中 芙 スプリングハズカム笑みしあいさつ 慶 手折りたる花ひと枝にある歴史 芙 壬生狂言の鉦たからかに 執筆 2012年7月30日首 8月3日尾 文音 |
◆国民文化祭2012 とくしま
徳島県知事賞 二十韻 「B面の歌」 の巻 岡部七兵衛 捌 B面の歌口ずさむ夜長かな 岡部七兵衛 湾を黄金に染める望月 浅沼小葦 菊人形菊師の技に生かされて 密田妖子 親子並んで記念撮影 城依子 ウ初めてのサイクリングにVサイン 齋藤桂 胸のときめく湘南の風 七兵衛 愛の巣は脇の小径の突き当たり 小葦 闇の中から赤子泣く声 妖子 蚊遣り焚く怪談今が佳境にて 依子 とけてしまった氷金時 桂 ナオ 昨日からしきりに疼く親不知 七兵衛 草書で届く手紙読めずに 小葦 再三の見合い勧める伯母二人 妖子 初のデートはクリスマスイヴ 依子 騒がしき地球見下ろす冬の月 桂 円高進み株も暴落 七兵衛 ナウ のっそりと獏が顔出す夢の中 小葦 涅槃図前に般若湯酌む 妖子 山頭火現れそうな花の山 依子 霞たなびく静かなる午後 桂 起首 2011年10月6日満尾 2011年12月4日 |
徳島県教育委員会教育長賞 二十韻「仏徒なり」の巻 城依子 捌 仏徒なり梅雨のカラスも人間も 城依子 桑の実ふくみ過ごす一時 野崎健 せがまれておとぎ話のきりもなし小山百合子 沖行く船の汽笛長々 依 ウウイスキーグラスに透かす望の月 健 恋慕の闇をのぞく蟋蟀 百 紅葉狩情が濃すぎて鬼女になる 依 五徳のうえでたぎる鉄瓶 健 風に乗り聞こえる祖谷の粉ひき節 百 岩に腰掛け綴る自分史 依 ナオ水洟のバックパッカーバスを待つ 健 月の路地から夜泣蕎麦屋が 百 ちゃっかりと愛犬父の座にすわる 依 副市長たる肩書きを持ち 健 だしぬけに抱かれて落とす「罪と罰」 百 危険な愛に命賭けおり 依 ナウ 雑踏の天使の都屋台市 健 がさごそ動く桶のやどかり 百 花の下囲碁の勝負はお預けに 依 晴れたる空に揚げる大凧 健 起首 2011年6月15日 満尾 2011年7月20日 |
入選 二十韻「山茶花や」の巻 石川 葵捌 山茶花や人それぞれの夕間暮れ 石川 葵 寒気に沈む町の灯火 深津明子 和綴じの書墨のかすれもおもしろく 葵 口に投げ込むニッキドロップ 明 ゥ 鉄棒をくるり回れば逆さ月 葵 万妖祭の魔女にくらくら 明 芳香を放ち林檎はアダム待つ 葵 やけどしそうな朝の珈琲 明 せっかちで高血圧の元気者 葵 想定外を生きた母の子 明 ナオ 丸型の自動掃除機都合よく 明 カミキリ虫の伸ばす触覚 葵 月の舟新内流しの声に揺れ 明 酔い覚めの風入れる胸元 葵 墓場まで持っていきますあの事は 明 ヒエログリフに向かい合う鳥 葵 ナゥ 旅誘うキャッチコピーは秀逸で 明 彼岸詣での出店にぎやか 葵 花の友結ぶ靴紐新しく 明 留学の夢叶う春の日 葵 平成二十三年十二月二日首 二十四年二月十五日尾 文音 |
入選 二十韻「梅のちらほら」の巻 捌 間瀬芙美 児の温さ残す背中や春日和 間瀬芙美 巽の門に梅のちらほら 由川慶子 つばくろのモノトーン柄行き来して 芙 新任教師のめくる五線譜 慶 ウ 風薫るマドンナだった思い出を 芙 恋の病にジェネリック薬 慶 少しだけ癖を引きずる歩き方 芙 輓馬終へれば旨き干し草 慶 敦煌の街の隅々月明かり 芙 袖でぬぐひて林檎つややか 慶 ナオ 戦争は終はった僕は生きている 々 古里抱く神々の山 芙 虹の橋探し何処まで行ったやら 慶 石鹸カタコトだけの幸せ 芙 小さき嘘気づかぬふりの一葉忌 慶 枯蔦の這ふ欄の月 芙 ナウ カーナビに案内中止されし辻 慶 高校生のおしゃべりな波 芙 壬申の吉野に花の乱るるか 慶 野遊びの果て受ける杯 執筆 二十四年 三月八日首 三月二十八日尾 文音 |
入選 二十韻「風の唄」の巻 三吟 指揮者なき枯葦原や風の唄 佐藤ふさ子 鶴の渡りを映す湖 石川葵 クッションに刺繍幾重に刺し終えて 鳥海唯 好みの紅茶母に勧める ふ ウ あくまでも魁夷の月は中天に 葵 そぞろ寒とてクピド忙し 唯 片恋のときめき煽る秋祭 ふ 筮竹の卦は南西が吉 葵 スカイツリー目指して走る三輪車 唯 ぶちの野良犬旅のお伴を ふ ナオ 芋焼酎酌み交わす友はや逝きて 葵 残る暑さに月ととまどう 唯 留まらぬ時は流れる河の如 ふ 亭主の嘘を包むセロファン 葵 銀婚の紅白の餅寄り添わせ 唯 絆深まる仮設住宅 ふ ナウ 雨傘をくるり回して下校の子 葵 春泥除けて太極拳を 唯 山辺の菩提寺包む花朧 ふ 里穏やかに眠るお蚕 葵 平成二十三年十一月九日首 十二月二十九日尾 文音 |
入選 二十韻 「蒲公英の」の巻 捌 恒川暁子 蒲公英のゆれて鼓の音すなり 暁子 雪消え残るつくばいの陰 絢子 春服を揃える母はにこやかに 芙美 マカロンひとつコーヒーに添え 々 ウ カリヨンの響く避暑地に月いづる しげる 海ほおずきを鳴らす少年 絢 たおやかな年上の人に憧れて 暁 長編小説書き上げる午後 芙 山裾を縫ってハイウェーどこまでも 暁 それぞれの村それぞれの味 々 ナオ 震災の特番ばかりのテレビ欄 絢 頓服薬で効いてくる咳 芙 熱燗をどうぞと誘う細い指 絢 危ない橋も渡りたくなる 暁 ひと刷けの紅さす雲に望の月 し 草の実とばし犬のご帰還 芙 ナウ ハロウィンのパーティー準備うきうきと 暁 笑いふりまき道化師がくる し 花万朶背で幼児眠りおり 絢 キャッチボールは風光る中 芙 平成二十四年三月十三日 於:桜花学園大学栄サロン |
入選 二十韻「桜守」の巻 捌 田中イスズ 桜守植え継ぐ木々や奥山田 板倉合 茶店に並ぶ手摘み草餅 稲垣渥子 春ショールねじねじにして颯爽と 塚本益美 古稀の祝いにもらうアイフォン 松井文子 ウ 土用うなぎ東と西の食べ比べ 合 君がほんのり白い夏月 益 好きですと打ち明けられず時が経ち 合 和布の端切れのアップリケ展 森田美耶子 海はるかゴッホの愛したジャポニスム 武藤美恵子 尖閣諸島買ってしまうか 益 ナオ 鱈ちりで酒酌み交わし策を練る 文 形見になりし詩集一冊 渥 ストレスで曲がらぬ指をいとおしみ 合 窓を開けば夕化粧咲く イスズ 月今宵貴方待つ夜は眠られず 文 瓜坊防ぐ柵を巡らせ 渥 ナウ 輪袈裟かけ同行二人秋遍路 益 土埃立て走る軽トラ 耶 花嫁の涙きらりと大安日 益 水平線まで続く青空 文 平成二十四年四月一九日首尾 於:竜神交流館 |
入選 二十韻「木々のハミング」の巻 城依子 捌 風の丘木々のハミング聞いて夏 城依子 素足投げだし仰ぐ青空 齋藤桂 工房は六角形に建てられて 八尾暁吉女 陶芸教室いつも盛況 岡部七兵衛 ウ月皓々忘我のうちに去りし時 桂 細きうなじのいともさやかに 依 新妻の襷きりりと障子貼 七 雀かわゆく遊ぶ蹲居 暁 スカイツリー大東京を見下ろして 依 思いは遠くガウディのこと 桂 ナオひとつ目の旅行鞄に懐炉入れ 暁 狼吠える谷に満月 七 美しいアニメーションの大画面 桂 憂き世を忘れ夢の世界へ 依 夫も子も捨ててあなたと逃避行 七 寄り添って飲む朝の珈琲 暁 ナウ清らかにチャペルの鐘が流れ来て依 沖の霞に漕ぎ出す舟 七 眼帯のとれて三国一の花 暁 地酒楽しみつまむ独活和 七 起首 2011年7月20日 満尾 2011年8月25日 |
入選 二十韻「一直線の水尾」の巻 城依子 捌 うららかや島へ一直線の水尾 城依子 新入生の楽しげな声 八尾暁吉女 鉛筆を尖らせ蝶の写生して 岡部七兵衛 無心になりて幸せの時 齋藤桂 ウことのほか月きわやかに業平忌 暁吉女 祭りの法被粋に着こなし 依子 凛々しさと心遣いに惚れなおす 桂 休みを知らぬ掃除ロボット 七兵衛 おしゃべりなカラス窓からのぞきおり 依子 若き日の夢おどる稽古場 暁吉女 ナオ 熱燗に果てなくつづく演技論 七兵衛 寒念仏の通り過ぎゆく 桂 婿殿は靴の職人イタリアン 暁吉女 ハネムーンベビー眠る秋蚊帳 依子 月照らす最新型のEV車 桂 政権揺れていよよ冷まじ 七兵衛 ナウ八十路翁峡のいで湯で疲れ取り 依子 好物ばかり差し入れの籠 暁吉女 平家琵琶徐々に高まる花の夕 七兵衛 影も朧に古都の町筋 桂 起首 2012年4月10日満尾 2012年4月25日 |
入選 二十韻「春キャベツ」の巻 齋藤桂 捌 手秤すその名もうれし春キャベツ 齋藤桂 こども等遊ぶ水温む川 岡部七兵衛 雛飾り数代そろう見事さに 八尾暁吉女 老舗の和菓子色のゆかしき 城依子 ウ月涼し白壁つづく城下町 七兵衛 待宵草の側で人待つ 桂 韓流のドラマのような純な恋 依子 決して隙をみせぬライバル 暁吉女 餃子屋の向き合っている駅の裏 桂 鞠が大好きおとなりの猫 七兵衛 ナオ婆ちゃんに教わりながら毛糸編む 暁吉女 木の葉時雨の打ち続く夜 依子 再婚の話に揺れる律儀者 七兵衛 残る蚊はらう人の嫋やか 桂 山裾の古き祠を覗く月 依子 にょきにょきにょきと伸びるくさびら 暁吉女 ナウ真心でつづく朗読ボランティア 桂 おしゃれに結ぶ縞のスカーフ 七兵衛 花見酒一年の無事よろこびて 暁吉女 潮の香とどくうららかな苑 依子 起首 2012年2月22日満尾 2012年3月16日 |
入選 二十韻「ぎつたんばつこん」の巻 両吟 短日や早くも点る街路灯 齋藤桂 片時雨して小走りの人 上田真而子 背伸びする坊やの額硝子戸に 桂 賢者のごとく蹲る犬 而 ウ望の月杉山の上通りゆく 桂 事の起こりは地芝居の夜 而 吾亦紅妊婦も晴れの角隠し 桂 海の向ふの黒マリアさま 而 写真集歌声までも伝へきて 桂 よく通つたなアングラ劇場 而 ナオ菖蒲湯の香につつまれて仰ぐ月 而 窓の守宮は身じろぎもせず 桂 パエリアの芯の硬さに似た彼女 而 熱きハートは秘めてうそぶき 桂 大漁旗瓦礫に埋もれなほ著し 而 けふも変らず入相の鐘 桂 ナウ友よ来よ阿波の銘酒の口切らん 而 全快祝ふ麗らかな午後 桂 花大樹妖しきまでに咲きほこり 而 ぎつたんばつこん囀りの中 桂 起首 2011年11月24日満尾 2011年12月17日 |
◆2011年 「第十六回えひめ俵口連句全国大会」
*愛媛新聞社長賞 歌仙「蟷螂の子」の巻 捌 齋藤 桂
於 インターネット |
*愛媛朝日テレビ賞 歌仙 「梅雨のリズム」の巻 捌 間瀬芙美
於 新宿ワシントンホテル菊の間 |
◆◆平成23年『連句年鑑』(連句協会2011年発行)webめぎつね座◆
KUSARI 「たのしい三句たち」 一月一日(金) (No.87743) 繋がりし人と人とのKUSARIの環 和 色とりどりの個性満開 のら 一月四日(月) (No. 87798) 熱砂を冷やす夜の深まり アキ 未利用の闇と光のエネルギー 道草 道草をして進む文明 天球 二月二十日(土) (No.88861) 駅裏の一方通行迷路なり ザリ 会って別れたそれだけのこと 唯 ゆるやかに小流れ下る花筏 桂 二月二十五日(木) (No.88962) 心の傷を包む優しさ ひわ 浅春のひかりに溢るスイトピー 鶫 黄沙掃いし就活の靴 ふさ子 三月一日(月) (No.89047) 普天間は一体どこへ行くのかな キリマンジャロ 米のまんまが付いて廻らぁ 氷心 吠えたのか欠伸したのか檻の虎 ふさ子 二月二十一日(日) (No.88888) ドライトマトは過去を語らず 唯 ラブアフェヤー私とあなたの地中海 藍 祈りのあとにそっと口付け 麦 三月二十七日(土) (No.89605) 好きという言葉を君に届けます カンちゃん 肩紐すべる黒のスリップ アキ 玄関の前で止まった靴の音 ザリ 四月二十一日(水) (No.90268) 西に噴煙ひんがしに地震 藍 割烹着着た母いつもたじろがず 唯 友達100人お誕生会 麦 五月一日(土) (No.90474) ウィンクをして心盗んで かよねこ モノクルとシルクハットと夜会服 美句志 問題の絵はサロン落選 藍 五月五日(水) (No.90525) ほろ酔えば異星の歌を口ずさみ タヌ公 彼とわかれて猫と暮らして 不用之助 紫の匂菫のプランター あずき 五月十九日(水) (No.90842) 郭公の鳴く街の明け方 ちいばば その顔は何たくらんでいるのかな あづさ テスト用紙はゴミ箱の底 ザリ 五月二十八日(金) (No.91044) ひとりぼっちはとてもさびしい 藍 即席に注いだ愛に蓋をして あづさ 海老とネギ入りかきあげ一つ 美句志 七月四日(日) (No.91868) この世ややこしこの世いとおし 唯 知恵の輪のぱらり外れて暮早く あずき 英英辞典ダウンロードす R |
七月九日(金) (No.92016) 犬より格が下の父親 桃里 煙草の火時々強く光らせて 唯 捜査一課の非常階段 不用之助 七月九日(金) (No.92025) 忘れたいこと順番に思い出す 唯 マニフェストってなんだったっけ 蕗 椅子引いてエスコートするフェミニスト 天球 九月十四日(火) (No.93145) 大空のリンクを滑る宇宙船 ひわ 中国独楽が放り投げられ 天球 虚ろなる瞳のマダム・バタフライ 氷心 九月十五日(水) (No.93172) 知覧の海は悲しみの蒼 ザリ ゆっくりと染まりあなたに近くなる 唯 すっぽり被るメンズセーター あずき 十月四日(月) (No.93586) 狸が乗ったあれは泥舟 兎 浮き沈みしつつ私は冬に入り キリマンジャロ 天水桶に落ちた太陽 兎 十月六日(水) (No.93650) 貴方の腕に小首ゆだねて とけた あるがままみていてほしい夏木立 不用之助 トンボ生るる夕ぐれの池 とけた 十月二十五日(月) (No.94129) 校長の式辞今年は面白い 合 子雀並ぶ講堂の窓 麦 舌切の葛籠の中味気になって 和 十一月七日(日) (No.94463) 柿の木がよく見えていた母の部屋 鶫 引越して行く立冬の朝 氷心 わが町に楽市楽座復活し 伊都 十一月十二日(金) (No.94594) ドットのタイで決める商談 氷心 スピードを遅らせ走るコンテナ船 小町 月がきれいとメールしてくる おなすさん 十一月十七日(水) (No.94721) 春灯下便り書く手がつい止まり たつみ カフス釦は海底の色 麦 そのむかし人間だったこともある 小町 十二月十六日(木) (No.95818) 広場に響く教会の鐘 不用之助 安らぎは同じ時間を過ごすこと カンちゃん うつし世にいる人いない人 彗 十二月二十六日(日) (No.95498) 咲き満ちる花散ってゆく花 キリマンジャロ 長かった出世レースも終わりかけ 天球 100歳ですが体鍛えて ばらずし 平成二十二年一月一日〜十二月三十一日 (No87740〜No95601)より抜粋 |
◆国民文化祭2011 京都
*京都府実行委員会会長賞 両吟歌仙「春の土」の巻 さくさくと掘れば応へる春の土 上田真而子 沓脱ぎ石に眠る猫の仔 齋藤 桂 鄙の駅発車のベルののどらかに 而 飴玉ひとつ貰ふしあはせ 桂 おはなしのクライマックス月が出る 而 夜風にそよぐコスモスの影 桂 ウ せめてもとけふは坐禅の道元忌 而 古書市あれば西へ東へ 桂 セーヌ川果てはイギリス海峡と 而 指折りかぞへ待ちし再会 桂 添へ乳して眠りほうける幼妻 而 パンダの写真壁にいくつも 桂 半夏生片白草と又の名を 而 月は涼しげ神山の上 桂 アリヤーと蹴鞠の声の貴やかに 而 タイムトラベル異次元へ飛び 桂 花吹雪わが散り際はいかならむ 而 どこに居るのかあれは小綬鶏 桂 |
ナオ 届きたる都をどりの招待状 桂 座敷わらしも数のうちなり 而 酔ふほどに調子のあがる郷訛 桂 鳥打帽が妙に似合ふよ 而 車椅子散歩の途中日向ぼこ 桂 抱へるほどの冬至南京 而 従兄弟煮の語源しらべる広辞苑 桂 万葉仮字で恋は孤悲とか 而 燃えるよな想ひ隠せずピアス揺れ 桂 あはれ瓦礫と化せし愛の巣 而 月今宵祈る人影そこここに 桂 風炉名残とて招く会友 而 ナウ たまさかに木の実降る音興をそへ 桂 いつか来た径いや既視感か 而 パテシエも顔馴染みなり洒落た店 桂 傘寿の母はツイッター好き 而 船頭と掛合ひ漫才花見舟 桂 青墨淡く霞む遠景 而 起首 2011/2/26 満尾 2011/3/25 於文音 |
*京都府連句協会会長賞 歌仙「蛍」の巻 岡部七兵衛捌 闇にきて闇に消えたる蛍かな 岡部七兵衛 せせらぎの音乗せて涼風 根本美茄子 閑静な茶房の隅に憩うらん 伊都のヒミコ 世間話をあれやこれやと 桜井吉野 ナナハンで月の名所へひた走る 城依子 たわわに実る坂道の柿 七兵衛 ウ斑鳩に高々響く百舌の声 美茄子 厨子の形のストラップ買う ヒミコ しなやかに匂う黒髪なびかせて 吉野 女が魔女に変わる瞬間 依子 どろどろとダリの時計の溶ける音 七兵衛 床に転がるバーボンの瓶 美茄子 寒苦鳥いつの間にやら背後より ヒミコ 着膨れて見る月の細さよ 吉野 宮参りすみて嬰児はぐっすりと 依子 稜線緩く故郷の山 美茄子 勇壮に黒田節舞う花の宴 ヒミコ 栄転の友祝う麗日 吉野 |
ナオ 畑を打つ地球の鼓動たしかめつ 依子 戦い過ぎて荒れ果てた村 七兵衛 ダム造り賛否両論せめぎ合い 美茄子 いわくありげな通夜の客人 ヒミコ すれ違う香水の香を振り返り 吉野 恋うて焦がれて蛇身くねらす 依子 手拍子にいよよ激しいフラメンコ 七兵衛 泰然として道を説く僧 美茄子 哲学の教科書風が読んでいる ヒミコ 母校はついに廃校となり 吉野 子供らの声さわやかに月の歌 七兵衛 アニメ見ながら濁り酒酌む 依子 ナウ 湯上りの宿の半纏秋団扇 美茄子 散歩をせがむ犬の啼き声 ヒミコ 公園のゲートボールは賑やかに 吉野 見上げる空に真っ白な雲 七兵衛 花一片散ってこの世は事もなし 美茄子 届けられたる鯛の浜焼 依子 起首2010/7/9 満尾2011/11/ 於 インタネット |
*入選 歌仙「 紋瓦 」の巻 齋藤 桂捌 木守りや軒深き家の紋瓦 齋藤桂 微動だにせぬ池の寒鯉 城依子 焼きたての名代の菓子に列できて 岡部七兵衛 笑顔をかえし人のすぎゆく 八尾暁吉女 月明の苑に朗々カンツォーネ 依子 夜長たのしみ拍手喝采 桂 ウ火祭りに天狗まぎれる鞍馬山 暁吉女 猛威をふるう恋のウイルス 七兵衛 上がる熱止めようも無き片想い 桂 地下の酒場で苦き酒酌む 依子 夢のまま消えてしまった乱歩賞 七兵衛 野猿の遊ぶ島の交番 暁吉女 オリーブが咲いてゆっくり時ながれ 依子 ソーダ水手に浴びる月光 桂 閃きも努力も運も手繰り寄せ 暁吉女 次代へつなぐ伝統の技 桂 花盛りひと休みする登り窯 七兵衛 田鼠化して鶉と為る頃 依子 |
ナオ 旅心ふわりふくらむ春の朝 七兵衛 新幹線は北へ南へ 暁吉女 取材記者引き連れ総理忙しなく 依子 足音をのむ厚い絨緞 桂 雪の中真紅のバラの届けられ 暁吉女 愛を編みこむ白いマフラー 七兵衛 追伸に万葉人の相聞歌 桂 隠れ里には出湯こんこん 依子 夏痩せの母の手を引く散歩道 七兵衛 教会の窓開けられしまま 桂 妖精のほおりなげたる小望月 暁吉女 べったら市の賑わっており 依子 ナウ 下駄履きの身も爽やかに隅田川七兵衛 独演会は五十回目と 暁吉女 革表紙こまめにつけた日記帳 桂 棚にずらりと石の標本 七兵衛 古刹いま花爛漫の装いに 依子 仮想空間ぬけてうららか 暁吉女 起首2010/12/1 満尾2011/1/28 於 インタネット |
*入選 歌仙「古都の春」の巻 岡部七兵衛捌 声明の風となりけり古都の春 岡部七兵衛 草萌え出づる川沿ひの道 齋藤桂 手びさしで帰る小鳥を見送りて 城 依子 望遠鏡は少し重たい 八尾暁吉女 月の宴夢語り合ふ姉妹 桂 注がれし新酒香りふくよか 七兵衛 ウ もののけの遊んでゐるか薄原 暁吉女 同じリズムで過ぎるSL 依子 胸の奥大きくなってくるあなた 七兵衛 婚礼衣装今日は仮縫ひ 桂 にっこりと聖母マリアの立ち給ふ 依子 アニメ壁画の小児病棟 暁吉女 好物のいちご頬張る女の子 桂 夜店ひやかす客に夕月 七兵衛 境内に猫がゆっくり集まって 暁吉女 市長候補の品定めする 依子 由緒ある花の大樹に時忘れ 桂 白いスカーフなびく弥生野 七兵衛 |
ナオうららかに広がるフォークダンスの輪 依子 試合終はればみんな友達 暁吉女 楽しげに異国語なども飛び交って 桂 初心者向けの茶道教室 七兵衛 小振りなる焼締め壷に寒椿 暁吉女 情炎のごと燃ゆる狐火 依子 来る来ない待てども来ない憎い奴 七兵衛 真珠のピアス寂しげに揺れ 桂 中東に次々起る市民デモ 依子 平和を祈り鳴り止まぬ鐘 桂 海の香に在所の月を思ひ出し 暁吉女 夜の身に入む放浪の旅 七兵衛 ナウ 地芝居の役者もひたる露天の湯 暁吉女 旧家の梁の黒々として 依 子 人力車ゆうらりと行く石畳 七兵衛 京のことばを少し教はる 桂 花の夕山を見上げて深呼吸 依子 翅をやすめる黄蝶白蝶 暁吉女 起首2011/2/5 満尾2011/3/1 於 インタネット |
*入選 歌仙「九十の恋」の巻 捌 石川 葵 九十の恋かや白い曼珠沙華 繁原敏女 後髪引く宿の夕月 稲垣渥子 状差しにちちろ小さく描かれて 石川 葵 当番忘れ遊び廻る子 谷本守枝 ビーカーをごしごし洗う理科教師 板倉 合 峠の村に初時雨来る 渥 ウ 立枯の巨木そのまま年守り 枝 太く短く生きる人生 枝 洋館の女主は巴里が好き 女 サテンのドレス翡翠輝く 渥 鉄条網君を盗んで逃避行 合 最終章へ響け「英雄」 渥 ギヤマンのワインに酔うて月明かく 葵 薄翅蜉蝣群舞しており 合 両国へ仕切り直しの力士行く 女 キャリアを狙う検察の罠 枝 花霞一炊の夢醒めやらず 女 年若き海女磯笛を吹く 枝 |
ナオ春うらら象の模様の青銅器 渥 新幹線は掃除中です。 枝 ありがたや文殊菩薩のストラップ 枝 終活と言う言葉ずっしり 渥 はひふへほほっほと食べる太鼓焼き 女 ボディースーツに乳房押し込み 合 午後五時の彼を見初めし昇降機 渥 想い叶えて開くぼうたん 葵 顎なでてくれと擦り寄るねぼけ猫 女 塾へと急かすエプロンの母 渥 月良しと仰角上げるISS 合 酸漿鳴らすことのむずかし 枝 ナウたっぷりと薬味を散らす秋刀魚飯 渥 一病息災食べて眠れて 枝 開拓の苦労話を郷土誌に 渥 鳥雲に入る潮の満ち引き 合 大富士に御座す木花開耶姫 葵 ふらここ揺らす父と幼児 枝 平成二十二年九月二十一日 首尾 於桜花学園大学 |
*入選 歌仙「鳴釜の」の巻 衆議判 鳴釜の御堂時雨れる吉備路かな 石川 葵 駅に降りたち寄せる肩掛 佐藤ふさ子 BBSこぼれる若さ垣間見て 鳥海 唯 大繁盛の米粉ドーナツ 葵 水たまり地上の月を擁くらん ふ 窓ひやひやと竪琴を弾く 唯 ウ 購える虫の図鑑を仕舞う兄 葵 南米行きの夢を語りつ ふ 絡みつく眼差し心奪われて 唯 仙女するりと忍ぶ枕辺 葵 酔いどれのたわ言聞きし人も無く ふ 夏の霜置く辿り来た道 唯 アセチレンランプの匂い金魚売 葵 ガラス細工の地球廻れる ふ 舞踏劇佳境に入る午後八時 唯 舌下錠持つ父の横顔 葵 豆力士勝鬨あげる花隣 ふ カチャと撮りおく初虹の裾 唯 |
ナオうららかに遺跡静もるハイウエイ 葵 DNAの鎖連綿 唯 短命の総理日本を背負えるか ふ 五濁の塵を流す海原 葵 許せないことも許して湯豆腐を 唯 相惚れの仲妬む灰猫 ふ ガーターに潜ませておりデリンジャー 葵 栞はさんできょうはおしまい 唯 跳ね橋は又ゆっくりと繋がって ふ 粋に会釈を返す棟梁 葵 ワインバー止まり木で待つ真夜の月 唯 蟋蟀の音の静寂を断つ ふ ナウ地芝居の野暮もよかれと笑い合い 葵 お国訛に浸るひととき 唯 重たげにロープウェイは山頂へ ふ 踏み絵の残る教会の門 葵 幹抱く花の鼓動のふれる如 唯 健やかなれと揚げる大凧 ふ 平成二十二年十一月八日首 翌年二月七日尾文音 |
*入選 歌仙「深まなざしのゴリラ」の巻 岡部七兵衛捌 冬天へ深まなざしのゴリラかな 伊都のヒミコ 紅葉舞い散るおだやかな午後 岡部七兵衛 和菓子舗の藍の暖簾をくぐるらん 城 依子 女主人の点てるお抹茶 桜井吉野 月見舟いつしか湖の中ほどに 萩の屋千鳥 色無き風に響く組鐘(カリヨン) ヒミコ ウ べそをかく妖怪も来るハロウィーン 七兵衛 みんな揃って記念写真を 依子 週刊誌ありそうもない嘘ものせ 吉野 私の彼は十も年下 千鳥 お互いの吐息溶け合う忍び合い ヒミコ ひそひそひそと森のささやき 七兵衛 衣脱ぎ蛇がのっそり月の道 依子 閻魔詣にはずむ賽銭 吉野 永田町国を揺さぶる音がする 千鳥 メビウスの輪をもてあそぶ指 ヒミコ 花爛漫宇宙を回る地球号 七兵衛 都踊りは今がたけなわ 依子 |
ナオ ジパングの往復切符旅うらら 吉野 プチ整形で皺を伸ばして 千鳥 恋しさにからんころんと下駄の音 ヒミコ 人影も無い丑三つの町 七兵衛 思い出を肴に酒を酌みており 依子 華麗なリズム銀盤の舞 吉野 夢のごと凛と咲いたる寒薔薇 千鳥 蹴出しの赤に地下鉄の風 ヒミコ 懐に神田明神守り札 七兵衛 ハローワークに通い続ける 依子 ちぎり絵のような昼月あわあわと 吉野 ひとりぼっちの軒の鬼の子 千鳥 ナウ 質草を流してしまうそぞろ寒 ヒミコ 一刀彫にかける人生 七兵衛 初めてのブログがなぜか評判に 依子 静かに直す紙雛の向き 吉野 瑞祥のかしこきあたり花の雲 ヒミコ 甍に遊ぶ小雀の群 千鳥 起首2010/11/21 満尾2011/3/21於 インタネット |
*入選 歌仙「子らの夢」の巻 齋藤 桂 捌 書初や料紙はみ出す子らの夢 齋藤 桂 蓬莱飾はれの床の間 棚町 未悠 猫柳ビロードの芽を誇るらん 澤藤 蓑助 はるかに望む残雪の山 岡部七兵衛 畑返し終えて月夜の径急ぐ 城 依子 間近にせまる将棋大会 桂 ウ 新調の作務衣が似合う若き僧 未悠 女坂より来る足音 蓑助 曖昧なあなたの科にじらされて 七兵衛 魑魅魍魎が古蚊帳の裡 依子 木葉木菟啼きついでおり杣の家 桂 刺身こんにゃく父の好物 未悠 月見酒志ん生の芸なつかしむ 蓑助 最終のバス過ぎてうそ寒 七兵衛 公園のオブジェに縋るいぼむしり 依子 池のまわりは試歩に最適 桂 数式を愛す博士に花万朶 未悠 巣箱の穴は二十八ミリ 蓑助 |
ナオ 春のジャズわが胸中は青い空 七兵衛 国境越えて育つ友情 依子 古代文字読み解くことに時忘れ 桂 図書館の隅山積の本 未悠 羚羊の昂然と立つ岩の上 蓑助 くしゃみ可愛い君にぞっこん 七兵衛 人目避け通い続けてはや三年 依子 今日はじめての胎動があり 桂 窓の外スカイツリーのクレーンも 未悠 江戸の地名に多き谷の字 蓑助 寝静まる宿場町筋月の影 七兵衛 ピーナツむきつ家族団欒 依子 ナウ 爺さまのべい独楽自慢きりもなし 桂 片足立ちの体力測定 未悠 川下り舟の行方を決める棹 蓑助 木遣り流れる谷間の村 七兵衛 神楽殿ひらひらと花舞い込みて 依子 おたまじゃくしの楽しげな昼 蓑助 起首2011/1/4 満尾2011/3/11於 インタネット |
*入選 歌仙「無人駅」の巻 城 依子捌 山笑い風が乗り込む無人駅 城依子 合格通知ポケットの中 伊都のヒミコ ミュージカル春の主役に選ばれて岡部七兵衛 磨き上げたる大玻璃の窓 根本美茄子 水瓶に今宵の月のゆらゆらと 黒澤かすみ 後の袷のしつけ糸取る 依子 ウ 色変えぬ松に大使の馬車の列 ヒミコ 影のごとくにルパン参上 七兵衛 夫の目を盗んで交すアイメール 美茄子 めくるめく夢紡ぐ蜜房 かすみ うつし世の修羅に背を向け禅寺に 依子 こども手当はパチンコに消え ヒミコ 月上り徐々に賑わうビヤガーデン 七兵衛 色鮮やかに茄子の漬物 美茄子 代筆の母の便りのほのぼのと かすみ あしたはきっと良いことがある 依子 弓なりの大和まほろば花の雲 ヒミコ 西へ東へ舞える佐保姫 七兵衛 |
ナオ 清明にまなじり決す仕分人 美茄子 洗濯物に糊をきかせて かすみ 海鳴りが耳をくすぐる夕まぐれ 依子 幾星霜をサナトリウムに ヒミコ しょんぼりとおいてけぼりのかじけ鳥七兵衛 端から溶ける皿の煮凝り 美茄子 混浴の湯気の向うに白き肌 かすみ 魔性の笑みに男骨抜き 依子 浮舟に乗りて補陀落渡海せん ヒミコ 姿正しき富士の霊峰 七兵衛 しらしらと風の抜け行く後の月 美茄子 運動会の祝辞頼まれ かすみ ナウ絵手紙に描きし秋刀魚の生けるごと 依子 ケアーハウスに響く童謡 ヒミコ 宇宙からのぞく地球は美しく 七兵衛 久方ぶりに逢いし輩 美茄子 花の下会釈して人すれ違う かすみ 蝶たわむれる哲学の道 ヒミコ 起首2010/3/15 満尾2010/6/29於 インタネット |
*入選 歌仙「十三夜」の巻 城 依子捌 水音を聞きに出て行く十三夜 城 依子 影を正しく並ぶ藁塚 小山百合子 新蕎麦に自慢の腕を奮うらん 岡部七兵衛 長袖シャツの袖まくり上げ 棚町 未悠 たっぷりと墨を含ませ祝の文字 澤藤 蓑助 静かに街は大寒に入る 依子 ウ ガリバーによじ登る子ら雪祭 百合子 若いカップルつつむ恋風 七兵衛 貴婦人と森番が会う納屋のそば 未悠 牛乳積んだ馬車が過ぎゆく 蓑助 古傷を労りながら湯に浸かり 依子 ひとつ覚えの江刺追分 百合子 宵涼し月と並んで屋台酒 七兵衛 天牛そろり足元を這う 未悠 奥津城は山のふもとにひっそりと 依子 河童の民話語り継がれて 百合子 花吹雪校庭に舞う下校時 未悠 ジョギングの影揺れてうららか 七兵衛 |
ナオ 初虹へゴロゴロと曳く旅鞄 百合子 夢と希望を抱き続ける 依子 宝籤競馬競輪投機株 七兵衛 雨しとしとと湯島天神 未悠 寒紅を刷きていつもの茶房へと 依子 ふたりの愛のはじまりは冬 七兵衛 逃避行瞽女の姿に身を隠し 未悠 果ては野末のされこうべとも 依子 与野党で国を揺さぶる選挙戦 七兵衛 芥川賞受賞者はなし 未悠 月の縁ひとり愉しむハーブティ 依子 胸にしみ入る雁の声 七兵衛 ナウ 公園の時計止まりて秋惜しむ 未悠 沖へ沖へと遠ざかる船 依子 母さんの手を引き上る寺の道 七兵衛 白和えの味しかと受け継ぎ 未悠 とこしえの命をつなぐ花大樹 七兵衛 一指舞いて去りし佐保姫 未悠 起首2010/8/16 満尾2010/11/10於 インタネット |
*入選 歌仙 「北の春」の巻 捌 武藤美恵子 地が震え水襲い来る北の春 美耶子 三月半ば結ぶおにぎり 合 木蓮の綿毛はつんと上向きに 益美 私のあくびと猫のあくびと とみ子 編集長パソコン閉じる良夜なり 節子 遮断機の音風はさわやか と ウ柿吊るす祖母の教えは宝物 、 益 長い黒髪シュシュでまとめる 々 露天風呂湯気にかすんだうすい肩 文子 そっと触れればふわりくずれて 希 砂山の小さなシャベル真新し と シュークリームの甘さほどよく 節 やさし気に月の見下ろす草蛍 恵 竹床几では烏鷺の争い 合 吉凶を水晶玉にのぞく魔女 節 不明の年金知っていますか と 断崖の臼杵大仏花吹雪く 希 鱒の弁当バスで配られ と |
ナオ陶工の四方山話うららかに 文 前へ前へと進む人生 と 耐えている病の犬の潔さ 耶 ピアノソナタのもれる薔薇窓 希 こっそりとビンテージワイン買いこんで 益 古希の先生羽織る半纏 合 ストーブの給油ランプが点滅し と 二人で降りた単線の駅 文 別れるか死ぬか他には道もなく 渥子 ぽっかり浮かぶまんまるの月 と 秋鯖の煙吐き出す換気扇 耶 ひょんの実脇に夢を語らう 益 運動会地区別リレーで盛り上がり 文 ダムの水門閉ざされたまま と 省エネで豊かに暮らす人の知恵 合 雛のあられを焙烙で炒る 渥 旅の宿今年限りの花を見て 益 雉の隠れる土手の草むら 恵 平成二十三年三月十七日起首 四月二十一日満尾 於:水源クラブ |
*入選 歌仙「白粉花」 捌 山寺たつみ 入り乱れ白粉花の咲きにけり 岩崎 逢人 木立の彼方浮かぶ弦月 栗原 威人 文化の日落成式に招かれて 平林 香織 羽織袴の老いたご夫婦 八木 曄子 写真屋のウィンドー飾る三代目 栗原 良子 ちょっと一服氷金時 梅津 慶子 ウ誘われた金魚すくいの難しさ 山寺たつみ 楽屋に入る女噺家 逢 振られたとやっと気がつく待ちぼうけ 織 深酒しても浮かぶ俤 曄 ポンユーがお国言葉で話しかけ 威 ソファーで眠る小太りの三毛 返町 淳子 風邪心地早寝の窓に丸い月 み 回覧板を回す着ぶくれ 織 自転車でゆっくりと行くパトロール 曄 留守電ランプ赤く点滅 威 病床に花びら一つ二つ舞い み 春を惜しんで日めくりをはぐ 曄 |
ナオ暮遅く干店畳む若い香具師 威 友に出会った駅の人込み み 恒例の浅間登山に弟と 曄 熱いコーヒー飲んで出発 逢 夏休みお化け屋敷のアルバイト 良 夕立過ぎて風も涼しく 慶 犀川の橋詰に立つ君の影 威 はにかむ肩をそっと抱き寄せ み 見つめ合うスウィートルーム熱い息 慶 遠い笛の音しみじみと聞く 良 月明にそぞろ歩きの城下町 慶 バイクで回る棚経の僧 威 ナウ閉め切った奥の座敷にちちろ啼く み 久濶を叙す古い温泉 逢 加薬飯つい大盛りでお代わりし 良 峠を越えて目指す故郷 慶 久しぶり母の手を引く花の道 威 風やわらかな北国の昼 良 起首 平成二二年九月二日満尾 同年一二月九日 於 小布施町公民館 まなとも連句会 2011年7月8日打ち上げーISS国際宇宙船に搭載中 |
*入選 歌仙「初蝶や」 捌 山寺たつみ 初蝶やそぞろに揺れる旅心 栗原威人 美容院へとうららかな道 山寺たつみ 椿餅買ってきてねとメール来て 栗原良子 やおら背伸びの長椅子の猫 威 更待の街ぶらぶらと寄席帰り み 追い越してゆく子らは夜学か 良 ウ 自炊する倅に送る今年米 威 新作ドラマ楽しみに待つ み 耳元に小さく光るイヤリング 良 若い燕に腕をあずけて 威 睦言を思い出させる甘い声 み 名物市に客の行き交う 良 野馬追の町飲み込んだ大津波 威 髪を洗ってほっと一息 み 涼風が頬を撫でてく窓に月 良 クラスメートともんじゃ焼屋へ 威 傘寿との花守殿の内祝 良 盆の上には残る伊予柑 み |
ナオ春炬燵妻の電話は切りもなく 威 へへののもへじメモを埋める み 芳一は耳だけ経を忘れられ 良 ひっそり暮らす落人の里 威 ほろ酔いでサッカーを見る北吹く夜 み だるまストーブご自慢の父 良 道化師を目指す美形の次男坊 威 約束の娘が故郷で待つ み 教会の祝福の鐘高らかに 良 平戸の海は青く輝く 威 夕鵙に竿を収める釣果零 み 三日月拝む幼子の影 威 ナウ松茸が豊作ですと届けられ 良 賭け事好きな伯父の葬式 み 創業の苦労を胸に支配人 威 朝の新聞ゆっくりと読む 良 花を待つ甘味処は城の跡 み 山並遠く霞棚引く 良 起首 平成23年3月13日 満尾 同年5月19日 文音・メール まなとも連句会 2011年7月8日打ち上げーISS国際宇宙船に搭載中 |
*入選 歌仙「亀鳴くや」の巻 田岡 弘 捌 亀鳴くやどうにもならぬこと多く 田岡 裏の小川の水温む頃 佐々木榮一 雛の客絶えることなく暮れゆきて 弘 子等の笑顔に心地よき夢 一 真青なる空に浮かびし昼の月 弘 萩を揺らせて風の戯る 一 ウ教会の鐘の音にも秋深み 弘 ふつと認めし初恋の人 一 魂は炎のごとく燃え上がり 弘 過去といふ字をなぞる指先 一 政界の混迷の度は増してゆき 弘 思ひ通りにならぬカーナビ 一 十五夜に植田の広く耀ひて 一 鋭く響く郭公の聲 弘 地下鉄を出て喧騒の街の中 一 ティールームより望む海原 弘 なにゆゑを以てか花の散り急ぎ 一 龍馬旅立つ春の曙 弘 |
ナオ長閑やかに飛行機雲の伸びゆけば 一 年金手帳改めて見る 弘 小遣ひを可愛い孫にせがまれて 一 玩具箱には多種のロボット 弘 寒菊は兵士の墓に供へられ 一 残る虫にも悩みさまざま 弘 存分に腕ふるひたきことのあり 一 君と過ごすは恍惚の時 弘 ゴシップはふたりのあひだ切り裂きて 一 城の址だと分かる石積み 弘 立待の月皓々と天心に 弘 転けつまろびつ急ぐ瓜坊 一 ナウ濁酒竹馬の友の懐かしく 弘 いつの間にやら消ゆるしがらみ 一 隣国にGDPは譲れども 弘 山河まだまだ美しきこと 一 今年またひと日を京の花に酔ひ 弘 永久を願へば風のやはらか 一 首 平成二十三年二月十日 尾 平成二十三年三月八日 於 インターネット |
◆2010年 俵口15回「えひめ俵口連句全国大会」
☆松山市教育長賞 歌仙「命なり」の巻 衆議判 命なりみたび三河の秋の座に 佐藤俊一郎 金木犀もほろほろと月 矢崎藍 アトリエの設計図面鵙啼いて 由川慶子 いつも鋭く削る鉛筆 石川葵 兄ゆずりスピードテニスで勝ち進み 板倉合 糸を流して風に乗る蜘蛛 間瀬芙美 ウ 向日葵の戯れ言をきく膝小僧 葵 だってあのときうれしかったの 俊 ポコアポコ心はじける恋をして 藍 奇数のようにとんがった彼 葵 左ハンドル敗戦の野を走り抜け 慶 いま東京に地平線なし 藍 大量のコンビニ弁当積み上げて 合 サッカー選手プロとなる道 芙 狼の牙に利鎌の月冴ゆる 俊 円空仏はみな違う顔 葵 花を追い北の大地の果ての果て 慶 煉瓦の獄舎窓の淡雪 芙 |
ナオ いっせいに田螺のもぐる千枚田 慶 ついと転んで老いを知りたる 藍 名優の黒衣に徹し半世紀 慶 善と偽善と悪と偽悪と 葵 クリムトの女うっとり蕩けおり 々 洋燈の下で紅を直して 俊 イエスノーしかと聞こえず波の音 慶 蛍の消える二つ三つ四つ 俊 纏向の遺跡を掘れば夏も闌け 合 理系出身記者の送信 芙 東天に月は明星従えて 合 蒙古平原草紅葉する 藍 ナウ 長老の髭剃りあとのへちま水 慶 あやつ与党かもしや野党か 芙 左利きといいつつつまむ麩饅頭 慶 猫の子抱けば和毛やわらか 葵 追憶の木造校舎花の渦 藍 ちぎれて空へのぼりゆく凧 執筆 平成二十一年十月十七日首尾 於 豊田市「野島」 |
入選 歌仙「古代の夢」の巻 愛知 間瀬芙美 赤米や古代の夢を月の下 間瀬芙美 蜩の声透る山峡 矢崎 藍 秋袷ベストセラーを開きいて 繁原敏女 眼鏡を探すパソコンの前 長坂節子 熱帯魚地球の裏からやってくる 徳永あき子 みんな集まれ噴水広場 藍 ウ いつの間に齢重ねて解かること 女 最初の彼がやはりいちばん あ 褐色のシルクの肌のなめらかさ 藍 円形劇場残照の中 節 鳩がきて与党が野党になりました 芙 離れの隠居爪を噛んでる 節 七五三いたずらぼうずは神妙に 女 雪になるかとYAHOO 検索 あ ぶち猫の駅長さんの大あくび 節 現代アート縦か横かと 芙 絢爛な友禅織の花月夜 節 何処かで蝶の羽化のはじまる 女 |
ナオ行く春をドナウくだれば森深く 藍 買物籠にどさりベーコン 伊藤良重 ふうわりと着地してみる体重計 女 腰痛歯痛かくて心痛 藍 緑陰の愁いを秘めし阿修羅像 節 鉄砲百合の放つ芳香 藍 髪編んでほどいて恋と知りそめぬ 々 タトゥゆらめく愛の饗宴 芙 十六夜の雲はちぎれて流れたり あ 半蔵門をくぐる秋冷 芙 明雅忌の白磁の盃に新酒酌む 節 ライトブルーのペンの添削 藍 ナウ数え日のダウ平均は気がかりな 々 内野安打で大記録積む あ 寿限無寿限無続くこの先唱えたり 節 エイプリルフール誰の呼び出し 藍 迷いきて花うつくしき二度童 女 水面のどかに欄の影 節 平成二十一年九月十五日 於豊田市 「野島」 |
◆平成22年2010『連句年鑑』(連句協会 発行)webめぎつね座
KUSARI『たのしい三句たち』 一月一日(木) (No.78877) 初日の出金色の帯海を分け あずき 生きとし生けるものの呼び声 藍 一月四日(日) (No. 78941 ) アイポッドアモレミーオと歌いだす 道草 宇宙の朝はとても新鮮 小町 凍てついたピンクの薔薇がこんにちは ばらずし 二月二十六日(木) (No. 80378 ) マリンブルーの海と別荘 かよねこ 白化する珊瑚に泣いたマーメイド カンちゃん 愛は死んだと風がささやく 藍 三月十一日(土) ( No. 81430 ) 薄っすら明けて桜島山 鶫 蓬莱を目指すか白き船一艘 一睡 二人で過ごす長き歳月 彗 三月十三日(金) (No. 80758 ) ぐいっと締める派手なネクタイ 不用之助 ハレの日の自衛隊とはなんなのだ 暢 成り成り成りて余れる所 ななちゃん 三月十四日(土) (No. 81430 ) 草原の尺取虫は仕事中 ザリ 娘十八さなぎの脱皮 咲 うるせえと男言葉の返事くる 芳梅 四月九日(木) (No. 81400 ) いなかはいいよみなで帰って ちいばば この風は吹いているかな百年後 可央 人のかたちを解いた安らぎ 風 五月六日(水) (No. 81890) 派遣きられて鬱鬱の日々 芳梅 見返れば敵の野営の明々と タヌ公 伏龍鳳雛並ぶ幔幕 R 五月九日(土) (No. 81952 ) 君の本音をいつか知りたい みのり 長い髪編んでほどいてかきあげて 藍 ひっそり眠る妻のかたまり あずき 五月二十日(水) (No. 82174 ) 赤字決算発表の席 たつみ 百年に一度を生きている辛さ キリマンジャロ 高笑いする森の魔女たち あずき 七月九日(木) (No. 83314) 携帯電話持つか持たぬか おなすさん GPSで居場所の管理誰握る 咲 南洋気付マンタ様宛 ふさ子 |
七月二十五日(土) (No. 83718) エンジン音は北へ北へと 不用之助 気がつけば越えてる38度線 彗 熊にご注意今年夏から とけた 八月二十九日(土) (No. 84523) 小川には絶滅危惧種泳ぎゐて にゃん ホモサピエンス住むという星 あづさ 灰色の脳細胞の果てしなく ちいばば 八月三十日(日) (No. 84570) 食えれば良しと職を求めて 氷心 失業率過去最悪を更新中 道草 目薬をさす一滴二滴 水瓶 九月三日(木) (No. 84700) マイクロトマト赤くすずなり 合 新妻の手作りべんと冷やかされ 未知 時間をかけて暖める愛 氷心 十月三日(土) (No. 85538) 海霧の中から呼ぶ声を聞く たつみ 運命の人に出会った午前2時 のら 宿なく寄った閉めかけの店 天球 十月二十八日(水) (No. 86179) ケータイで「今ここ」と打つツイッター R 孤独のパルス刻むモールス カンちゃん 神々がいるのだろうか宙の果て ばび 十一月三十日(月) (No. 86980) 学生街は朝靄のなか 小町 反戦の旗手厨房で蕎麦を打つ 麦 今年の酒はちょっと辛口 あずき 十二月十七日(木) (No. 87457) バカボンのオヤジはこれでいいのだと 和 後悔ありてこその人生 ひわ 占いが当たってないと今わかり 天球 十二月二十日(日) (No. 87567) 秋日さす静かな午後の小画廊 桂 亡き人の声聞いたようにも 鳥 心にはいつもあなたの影があり キリマンジャロ 十二月二十九日(火) (No. 87567) 小首かしげる小さな雀 美句志 私にやましいことはありません 唯 ノーベル平和賞を頂く 蕗 平成二十一年一月一日より十二月三十一日 KUSARI(78876番〜87739番)より抜粋 於 HP矢崎藍の連句わーるどBBS I |
◆2009年「第45回岐阜市文芸祭 連句部門 (表合八句)」
☆文芸祭賞 表合八句 「少年剣士」の巻 捌 深津明子 紫陽花や少年剣士の顔締まる 明子 蜻蛉生まれし沼のフォーラム 由川慶子 パソコンも電卓も無い国の月 小野芳梅 万妖祭の魔女の微笑み 明子 葦火燃え調合たがふ痩せ薬 慶子 当てもないのに歩くこの道 芳梅 春障子開けて花嫁家を出ん 明子 蛤の椀香りゆたかに 芳梅 平成21年6月7日起首7月18日満尾 |
☆佳作 表合せ八句「ひょいひょい」 捌 板倉 合 いただいた胡瓜ひょいひょい晩げかな 合 富士の五合目山男の汗 稲垣渥子 四つ手駕籠客死の宗祇乗せもして 由川慶子 色の変わらぬ松をしるしに 合 香りよき新酒売り出す頃となり 渥 噂の月はビルの向ふに 慶 人屋よりじっと見つめる花の恋 合 声張り上げて求婚の雉 渥 平成21年6月22日起首6月26日満尾 |
◆国民文化祭2009 しずおか
☆静岡県実行委員会会長賞 半歌仙「やさしき貌」の巻 城 依子捌 水打つや街はやさしき貌となる 城依子 小さな虹の生れる道端 密田 妖子 少年はおとぎの国の夢を見て 岡部七兵衛 植物図鑑開く文机 浅沼 小葦 隣人の月愛でる声歌う声 齋藤 桂 鰯大漁地引き網引く 依子 ウ色葉散り気分はいつも山頭火 妖子 青い空には流れ行く雲 七兵衛 貝殻の指輪をそっと手渡され 小葦 はじめて歩幅合わすときめき 桂 鬼女となる君への思い強すぎて 依子 泣いて笑って南無阿弥陀仏 妖子 雪月夜宇宙広大俺一人 七兵衛 森の奥からオオカミの声 小葦 もめにもめかんぽの宿は売れぬまま 桂 電動自転車坂をすいすい 妖子 花だより届けば疼く旅心 小葦 シャンパンの栓飛んで春宵 七兵衛 2008年7月16日起首 同年8月10日満尾 |
☆ 静岡県議会議長賞 半歌仙「忽ちに」の巻 田岡 弘 捌 忽ちに風の中なる牡丹かな 田岡 弘 静寂を破る夏の鶯 城 依子 デッサンは思ひのままに伸びやかに 弘 背なになじみしリビングの椅子 子 皓々と湖を照らして望の月 弘 音も立てずに穴に入る蛇 子 ウ木の実降る道はいつしか行き止り 弘 恥ぢらひながら交はすくちづけ 弘 夢うつつうすむらさきの閨の内 子 踏み損なつてしまふブレーキ 弘 アメリカに端を発した株下落 子 酒の力で憂さを晴らさん 弘 寒念仏月の明りに過ぎ去りて 子 犬がとぼとぼ底冷えの街 子 友を待つことにも慣れてティールーム 弘 スローライフもいつか身につき 子 霊峰の富士を遥かに花の雲 弘 茶摘の唄の流れ来る午後 子 平成二十年五月十八日起首 同七月十四日満尾 |
☆入選 半歌仙「過ぎ去りし」の巻 田岡 弘 捌 過ぎ去りしものに靡ける芒かな 田岡 弘 背なに負ひたる十六夜の月 西岡 恭平 新走り友の笑顔の嬉しくて 弘 粋な小唄でこれが引けどき 平 ゆつたりと風にまかせて鯉幟 弘 アカシア並木香る故郷 平 ウ ローカルな電車のよぎる町はづれ 弘 愁ひを秘めし妙齢のひと 弘 衣々の別れをせかす明け鴉 平 この世のことはみんな泡沫 弘 深まりし金融危機を如何にせん 平 六十億は乗れぬ方舟 平 月冴えて小夜の中山夜泣石 弘 蟷螂枯れて身じろぎもせず 平 和やかに話の弾むダイニング 弘 神の啓示と宝くじ買ふ 平 未来への夢をちりばめ花筏 弘 空の青さに駈ける若駒 平 |
☆入選 半歌仙「森の道」の巻 岡部七兵衛 捌 さえずりやどこまで続く森の道 岡部七兵衛 雪割草の揺れる岩陰 澤藤 蓑助 大凧に子の命名を揮毫して 小山百合子 端切れ集めて作る巾着 棚町 未悠 満月の覗いておりし飾り窓 城 依子 街いっぱいに香る木犀 七兵衛 ウ 登高の半ばに膝の笑い出す 蓑助 小さき祠にはずむ賽銭 百合子 恋に泣く文楽人形黄八丈 未悠 太宰のように死ぬもまた良し 依子 居酒屋のいつもの椅子でひとり酒 七兵衛 刑事張込むワゴン車の中 蓑助 貝風鈴有明の風捉えたる 百合子 正覚坊は海へ向かいて 未悠 みんなみの島に幸あること信じ 依子 週に三回習うウクレレ 百合子 舞姿みなしなやかに花の下 蓑助 山裾遠くかぎろえる村 未悠 2009年2月10日起首 同年3月6日満尾 |
☆入選 半歌仙「蜘蛛の糸」の巻 岡部七兵衛 捌 蜘蛛の糸一筋垂れる仁王門 岡部七兵衛 夏の終わりを告げる白雲 浅沼小葦 あざやかなパントマイムに輪ができて 城 依子 ワッフルを売る髭のおじさん 齋藤 桂 路地に住む野良猫たちも月の客 密田妖子 新酒入荷のでかい張り紙 七兵衛 ウ 団栗を拾って帰る九十九折 小葦 おなご先生笑みを絶やさず 依子 縁談の持ち込まれたる良い日柄 桂 風もないのにゆらり揺り椅子 妖子 山の端に突然黒く立つ煙 七兵衛 ダカールラリー駆ける四輪 小葦 ボーナスを全部はたいてライカ買い 依子 寒さ忘れて仰ぐ満月 桂 墓石も混じる石垣城の跡 妖子 ピアニッシモの川のささやき 小葦 花筵ままごとの子等楽しげに 依子 窓開け放つうららかな午後 桂 2008年8月4日起首 同年9月11日満尾 |
☆入選 半歌仙「命 終」の巻 森本多衣 捌 日めくりと競ふ命や山笑ふ 森本 多衣 生まれ変りは胡蝶など良し 鈴木 漠 白梅は見頃紅梅如何ならん 在間 洋子 手招きをしてどうぞ隣人 山名 才 天瓜粉つけた子を連れ月の浜 松本 昌子 上布の裾を潮に濡らして 香山 雅代 ウ黄楊の櫛飾り乙女の髪ひかる 森本 善信 懺悔堂出てまづメーキャップ 安丸てつじ ジェラシーの炎自ら鎮めつつ 三神あすか 残る蛍もやがて消え行き 洋子 半円を有明月は傾げをり 漠 銀杏散りゆく薄闇の中 多衣 渓づたひ三叉路に坐す道祖神 雅代 褞袍着た客庭下駄を履き 昌子 店先の初氷には怖怖(こはごは)と 才 とんがり屋根をとんび旋回 あすか 間延びして谺の還る花の午後 てつじ 鉄の鎖の軋るぶらんこ 執筆 2009年2月17日起首 同年3月2日満尾 |
☆入選 半歌仙「除夜の鐘」の巻 岡部七兵衛 捌 除夜の鐘かすかに動く猫の髭 岡部七兵衛 小半時ほど舞いし初雪 八尾暁吉女 公園で子等は元気に遊ぶらん 城依子 アップルパイは母の手作り 齋藤 桂 北へ行くフェリーに乗って月の客 暁吉女 すでに粧う四方の山々 七兵衛 ウ 赤とんぼ分校跡に群なして 桂 思い出はみな美しきもの 依子 さまざまな恋を重ねた老女優 暁吉女 ご酒が入ればいつも都々逸 桂 草庵の前にひろがる隅田川 七兵衛 小さき祠にお供えの山 暁吉女 月仰ぐナイター熱く熱く燃え 依子 ラムネ片手にかけるケータイ 桂 電車内盲導犬は紳士なり 暁吉女 夢のふくらむ旅立ちの朝 七兵衛 花爛漫宗祇の墓のひっそりと 依子 どこからとなく小綬鶏の声 桂 2008年12月17日起首 2009年1月16日満尾 |
☆入選 半歌仙「ガラスの迷路」 膝送り 早春やガラスの迷路抜けられず 三宅節子 約束の地にかかる初虹 佛渕雀羅 田螺鳴く良きパン種を眠らせて 由川 慶子 キッチンの窓南に開け 稲垣渥子 まろうどのてづまに消える月の影 羅 動き出す虎檻のやや寒 節 ウ静まりしキトラ古墳に木の実落つ 渥 美大生抱く丹の色の壷 慶 過去未来飛翔するもの捕らえむと 節 恋より疾きカルメンの死は 羅 冬月に彼の鎖骨は痛まぬか 慶 年末派遣村の味噌汁 渥 ポケットにほつれる芭蕉七部集 羅 ハーレー駆って長き探索 節 島浮かぶ海に花火のどよめける 渥 どこでもドアをパッと押し開け 慶 飛行士に届けに行かむ山すみれ 節 魔法瓶よりそそぐ陽炎 羅 平成二十一年二月二十七日起首同年三月二十七日満尾 |
☆入選 半歌仙「真菰の芽」の巻 小山百合子 捌 こめかみに風の重たし真菰の芽 小山百合子 子と連れ立ちて蝶の舞う土手 岡部七兵衛 卒業期オープンカフェの賑わいて 城依子 埠頭離れる豪華客船 藤澤蓑助 月今宵夢でふくらむ旅鞄 棚町未悠 卓の榠櫨の香り深まる 百合子 ウ 祭文に野次の飛びたる牛祭 百合子 少し鼻緒のきつき駒下駄 依子 ご新造の傘のしずくに肩ぬらし 蓑助 格差婚とて話題ふりまく 未悠 キャラバンの隊列消ゆる砂嵐 百合子 歴史を秘めて眠る楼蘭 七兵衛 汗拭いひたすら絵筆運ぶ人 依子 焼酎すする窓に残月 蓑助 やすやすと個人情報流失し 依子 籠のオウムはおしゃべりが好き 百合子 闇に浮くライトアップの花の滝 七兵衛 宗祇偲びつ仰ぐ春嶺 依子 2009年3月10日起首 同年4月17日満尾 |
☆入選 半歌仙「坂の町」の巻 城依子 捌 春灯の淡くこぼるる坂の町 城依子 枝垂れ柳を見下ろせる月 八尾暁吉女 桜鯛発止と出刃を打ち込みて 岡部七兵衛 潮焼けの顔逞しき腕 齋藤桂 フィールドへ研究室はいつも留守 暁吉女 ストーブは消え灰が白々 依子 ウ 裾野から仰ぐ雪嶺凛々しかり 桂 少女の夢を乗せる浮き雲 七兵衛 婚礼の衣装をまとい馬車に乗る 依子 文化の壁を愛の高飛び 暁吉女 救援の物資届けるNPO 七兵衛 笑顔で開くメールボックス 桂 大杯に映る玉兎と遊ぶ宵 七兵衛 殿様ばった泰然として 暁吉女 御命講善男善女ぞろぞろと 依子 太鼓の音に揺れる池の面 暁吉女 名木の樹齢いかほど花篝 桂 ビュフェの版画に出会う麗日 七兵衛 2009年2月19日起首 同年3月16日満尾 |
☆入選 半歌仙「風生まれ」の巻 棚町未悠 捌 風生まれ薄の海に溺れけり 棚町未悠 国境あたり浮かぶ十六夜 渡部葉月 ミュージカル芸術祭賞狙ふらん 中林あや 白黒縞の帽子ななめに 悠 止まっては遠のいて行く乳母車 葉 きびきびとして馬洗ふ影 や ウ 山小屋に怪談話きりもなし 悠 物音途絶え外の静かさ 葉 流し目の練習してる姫鏡 や スリムなズボン合鍵をもち 悠 アレルギーあちらを掻けばこちらまで 葉 しっぽを探すすっぽんの鍋 や 寒月光五百羅漢の笑みこぼれ 悠 シルクロードの取材班らし 葉 愛用のカメラ記念の傷があり や 競り市に出す大名の雛 悠 ほんのりと酔ふて艶やか花衣 葉 町騒うすれ夕べうららか や 2008年12月16日起首 2009年1月10日満尾 |
☆入選 半歌仙「命なり」 森本 多衣捌 花一樹燃えて全山命なり 森本 多衣 畑に縺るる初蝶の影 森本 善信 朝飯は若布の香立つ嬉しさに 松本 昌子 肺活量の大いなるまま 鈴木 漠 図書館へ運動兼ねる坂の道 安丸てつじ 草刈鎌は月光に濡れ 三神あすか ウ風鈴の音に誘はれて夢に入る 在間 洋子 たをやめ萎る庵の枝折戸 香山 雅代 恋多く生きしとか聞く舞ひ姿 山名 才 カメラに収む白鳥の群れ 昌子 蔦枯れてむしろ明るむ我がこころ 善信 幸も不幸も己が身の内 多衣 獺祭忌なれば句帳を懐中に あすか 臨死体験秋の夜長は てつじ 嗜めば酒は良薬月見酒 洋子 遠回りして帰る面々 才 チェーホフの桜の園の再演に 漠 名優偲ぶ陽炎のなか 雅代 2009年3月17日起首 同年3月31日満尾 |
☆入選 半歌仙「野も山も」の巻 岡部七兵衛 捌 野も山も龍田の姫の衣の音 岡部七兵衛 端然と座す月の正客 城 依子 菊作りベテラン同士楽しげに 八尾暁吉女 側にひょこひょこ機嫌よき鳩 齋藤桂 校庭の銅像天を仰ぐらん 依子 涼風うけてラジオ体操 七兵衛 ウ 真っ白なショートパンツの眩しくて 桂 思われ面皰つぶさずにおく 暁吉女 神田川沿いの下宿が愛の巣に 依子 朝日に映えるカーテンの襞 桂 六両目始発電車に乗り込んで 暁吉女 飲めや騒げと団体の客 七兵衛 肩書にしがみついてる部長補佐 依子 尻尾丸めて黒き灰猫 暁吉女 月冴えて庫裏の煙のくっきりと 桂 写真を添えてブログ更新 依子 満開の花の名所を姉妹 暁吉女 茶店の棚に並ぶ草餅 桂 2008年8月22日起首 同年9月11日満尾 |
☆入選 半歌仙「ざわめきも」の巻 齋藤 桂 捌 ざわめきも楽しげなるや竹の春 齋藤桂 月の明るき湖近き里 八尾暁吉女 風炉名残髪をきりりと結い上げて 城依子 父の好みし床の掛け軸 岡部七兵衛 跡継ぎは蔵を改造ギャラリーに 暁吉女 夏の燕がすいと横切る 桂 ウ そよ風にひと息いれる登山道 七兵衛 携帯電話OFFにしたまま 依子 いつの間に恋のかけひき覚えたの 桂 八百屋お七がいればライバル 暁吉女 スコッチを手に繙きし草双紙 依子 棚いっぱいに模型機関車 七兵衛 締め切りの迫る事務所は戦場に 暁吉女 師走の男ねじり鉢巻 桂 雪月夜潮の香とどく二の鳥居 七兵衛 文化遺産をめぐる長旅 暁吉女 花吹雪ボーイスカウト整列す 依子 夢といっしょに揚げる大凧 七兵衛 2008年9月16日起首 同年10月3日満尾 |
☆入選 半歌仙「蒼穹や」の巻 棚町未悠 捌 蒼穹や囀りひびく尾瀬ヶ原 棚町未悠 木道沿ひの水温む頃 渡部葉月 シャボン玉作りに飽かぬ兄がゐて 菅原紀彦 鍔の大きな帽子誂へ 悠 月今宵真打披露口上に 葉 タッチパネルで休む蟷螂 彦 ウ 紅葉舟ゆるゆる進む山の影 悠 青春十八切符愛用 葉 僕だけに微笑む巫女とすれ違ふ 彦 初の密会揺れるブローチ 悠 風薫り*「熱狂の日」てふ音楽祭 葉 屋根へ登れば月の涼しく 彦 喪の旅に静かに地酒酌み交はす 悠 年の瀬せまるヴァチカンの列 葉 ジャケットの裏ポケットに札束が 彦 裁判員の知らせ届きて 悠 花の房蜜吸ふ鳥の戯れる 葉 ネットゲームに勝ちし永日 彦 2009年3月16日起首 同年4月20日満尾 *数年前からフランスのナントと東京で、毎年テーマを もって行うクラシック音楽祭 |
◆平成21年『連句年鑑』(連句協会 発行)webめぎつね座
WEBめぎつね座 KUSARI『たのしい三句たち』 一月二十八日(月) (No.71552) 心の奥に届く安らぎ ザリ 曾祖母のベッド占領する積木 ふさ子 しゅっぽと夜汽車通り過ぎ行く 風 一月三十一日(木) (No.71610) 尾瀬ヶ原には水草の花 ひわ 綿菓子もパンダも眩し雲の峰 桂 病院船が明日着くという 道草 二月十日(日) (No.71870) 天井追ってしくじった株 おづぬ エレベーター地下三階で降りた客 藍 あぐらを掻いてねずみ密談 あずき 二月十一日(月) (No.71899) 焦るほど上手に眉が引けなくて ひわ こっとんこっとん電車カーブに ザリ 浮き沈みあれこれめぐる世のさだめ 彗 三月九日(日) (No.72331) 大江戸に響き渡るは呼子笛 不用之助 親分敵は多国籍です のら テキーラとワイン老酒ウイスキー とけた 三月十一日(火) (No.72478) グラスが割れる錯覚の恋 かよねこ 真っ白なクリスマスローズ咲きました あずき ご無沙汰ですと届く絵手紙 おなすさん 三月二十七日(木) (No.72779) 対立の裏に資源の争奪戦 ばび 金の指ぬきプディングに入れ R 満月に祈る手芸の上達を カンちゃん 五月三日(土) (No.73430) 逢い引きしてる月と憲法 暢 九条の橋のたもとの餡蜜屋 麦 雪駄ちゃらちゃらさせて東寺へ かよねこ 五月十七日(土) (No.73678) ピアスきらりと光る片耳 芳梅 お待ちかね野外ライブの始まりだ みのり 人も芒も右に左に 氷心 六月一日(日) (No.73927) クローンのティラノザウルス売り出され あずき 薔薇の花束もらうアイドル ばらずし 年下の男心のありどころ 藍 |
六月十一日(水) (No.74112) あなたと続くこの海の水 ちいばば へその緒が干からびきって桐の箱 あづさ 朝は必ずやってくるから みのり 六月二十五日(水) (No.74359) 夏隣スワロフスキーを付け爪に あずき 情報員という職種有り タヌ公 正解をツー・トンと打つカンニング R 七月四日(金) (No.74504) ポップオペラという新ジャンル のら 古池を前に二人の俳諧師 氷心 待ってましたと蛙飛び込む 兎 七月一日(火) (No.74502) 竹刀がうなる面で一本 さむ 天辺の泰山木のハラと散る 鶫 主亡き庭雨戸動かず ザリ 八月二日(土) (No.75278) 平均寿命又も更新 ふさ子 一生の幸と不幸は同じ量 蕗 蜥蜴の尻尾切れてピクピク キリマンジャロ 九月十日(水) (No.76265) 風鈴がちりちりん世は去りがたし 可央 酒保開きたる鉄の艦 氷心 雲行きの怪しい気配インド洋 ひわ 十一月一日(土) (No.77638) 自由電子の光速の恋 暢 人の世に人と生まれて面白き 合 五分の魂一分の魂 ザリ 十一月二十一日(金) (No.78038) 地層の中の化石蠢く ふさ子 空青くメタセコイアは堂々と ザリ キスする前に形而上学 ななちゃん 十一月二十二日(土) (No.76055) 妖精の竪琴聞いている夜更け ひわ もう少しだけこのままでいて ザリ 老い迫る三十年の心裂け ちいばば 十一月二十三日(日) (No.78083) 愚に愚に愚つづく愚に愚に愚に愚に愚 ななちゃん 海鼠夫婦は今日もお散歩 不用之助 大根をすりおろしてる午後六時 小町 十二月十九日(金) (No.78615) 食卓の灯火ゆれて影ゆれて あずき いじけたような安物のいす マカロン 聞いてくれ派遣社員になったワケ 不用之助 平成20年1月1日より12月31日(71070番〜78875番)より抜粋 |
◆雨乞い小町さんを迎えてKUSARIオフ会2009 於 名古屋
連句14「風光る」 付け回し 連句碑にKUSARI集いて風光る 雨乞小町 十とせの思いさまざまの春 藍 花筏いま本流にかかるらん ちいばば 坂道曲がるボンネットバス ザリ 大鏡子は散髪を楽しんで ふさ子 「そばに居るね」を着メロに入れ 麦 待つつらさ隠せないまま夏帽子 奏 溶けてぽたぽたアイスキャンディー 芳梅 紙芝居自作自読の高校生 合 カアと一声寒鴉など ばび 雲流れビルが倒れてくるような 眠り猫 精霊火焚き月の出を待つ 蕗 数珠玉を摘んで集めてお手玉に 彗 冬支度するころの里山 ばらずし 2009年3月24日首尾 於 名古屋 桃花苑 |
連句14「花眩し」 付け回し 花眩しほら駆けてくるひとは誰 藍 春に集いて乾杯の声 彗 テレビ塔展望台から北を見て ばらずし 地下鉄のなか彼の香水 めじろ 初めての浴衣姿に胸がキュン milky 長者町とう裏通りあり 蕗 月天心泣いて笑って年とって ばび 馬肥ゆるとき妻もメタボに 眠り猫 白塗りに知るも知らぬも村芝居 ひわ ワンセグで見るWBC 赤鈴 (ここで日本優勝ニュース・乾杯) ニンニクの匂いが邪魔でできぬキス たま祐 ピンフラッグは木枯らしのなか 風 大鷲のゆるりゆるりと回る空 ザリ 笊にいっぱい寒蜆とる 芳梅 2009年3月24日首尾 於 名古屋 桃花苑 |
◆平成21年『連句年鑑』(連句協会 発行)webめぎつね座
2007年KUSARIより「たのしい三句たち」 1月01日(月) (62433) ありがとう今このときを生きている ザリ 新年祝う満天の星 藍 1月22日(月) (62927) 研ぎたてでキャベツタマネギ真二つ 道草 スパッカナポリに響く靴音 風 旧市街世界遺産に指定され ひわ 2月18日(日) (63627) 止まるべき駅をはるかに通り越し ばらずし どこまで延びる平均寿命 ひわ ケイタイとペットボトルが必需品 鶫 3月14日(水) (64328) ロゼを重ねる君の饒舌 氷心 バンサンカン軽い女のふりをする 藍 眠らない街パリ25時 ひわ 4月17日(火) ( 65323) 赤々と夾竹桃が燃えている ザリ お願いですから水をください 氷心 キャパの死を写す写真は残されず 麦 5月07日(火) (65794) 夜空はまるでプラネタリウム ひわ さそり座に生まれその後の運命は 彗 こぶしをじっと見てる幼子 ふさ子 6月14日(木) ( 66623) 今日もまたひっきりなしに救急車 桂 恋の伝染病が蔓延 ふさ子 タロットのカード涙で濡らす夜 カンちゃん 6月14日(木) (66648) 大判焼きはやはりつぶ餡 あずき 何事もアバウト好きなフリーター 芳梅 泣かした女数え切れない 不用之助 7月13日(金) (67317) 遠い過去大事な大事な米作り ザリ 軍にはあぶら兵士には糧 道草 憲法の上で焚き火をするような 暢 7月13日(金) (67288) 湖水に揺れる睡蓮の華 ちいばば ソムリエになりたし小さき店を持つ 小町 ウッドベースの響き静かに のら |
8月7日(火) (67853) 朧月末摘花になれますか あずき 生活保護は受けられません ザリ 閂の掛かったままの鉄の門 桂 8月7日(火) (67834) 核の傘さし非核もごもご 暢 久々のきのこご飯で囲む卓 みのり 隣の壁に耳付ける秋 氷心 9月12日(水) (68701) ヒビ割れの政治に意欲衰えて かよねこ 襲う鬱病負えぬ責任 ちいばば 螻蛄鳴いててっぱの話題ひとつ増え たつみ 9月14日(金) (68741) いいとこで運が逃げてく生まれつき たつみ 女房だけはすぎたヤツだと のら 黒光りしている柱五十年 蕗 10月2日(火) (69150) 郵便屋さん今日も道行く ばび 首の皮一枚繋ぎ民営化 にゃん ヘタだけ枝にのこる渋柿 あづさ 11月16日(金) (70204) 君との距離は少し縮まり ザリ いもうとのてのひらにおく海一個 ライタ ピアノの上に白い貝殻 R 12月7日(日) (70634) 海のあわいか友はいずこに 風 声限り呼んでもこだま帰り来ず 桂 12月9日(火) (70668) 記憶の底のオルガンの音 のら コンドルが翔びたつ千の風に乗り 兎 君の才能君の情熱 藍 失いしもの大きかり時雨くる 霞 冬の薔薇の凜と紅 藍 天界に二胡を奏でる天女たち 風 12月30日(日) (71062) 地球儀回すおさなごの指 あづさ この星の錆はきれいに落とさなきゃ あずき 平成19年1月1日より12月31日 (62434番〜71069番)より抜粋 |
◆国民文化祭2008 いばらき
☆筑西市教育委員会教育長賞 半歌仙「河馬の鼻」の巻 八城水斎 捌 暑き日やじっと動かぬ河馬の鼻 八城水斎 麦藁帽の子等の歓声 広中みずほ 新装のバーガーショップ列できて 大鷹詩葉 カラー舗道の模様いろいろ 原田なずな 月見台風さわやかに抜けてゆく みずほ しばし聞きいる虫の合唱 水斎 ウ 菊枕ふたつ作りて父母へ なずな じゃんけんぽんで介護当番 詩葉 裏窓にくっきり浮かぶ筑波山 水斎 恋も科学もいわば冒険 みずほ ナナハンの君の背中にしがみつき 詩葉 下乗の石碑照らす寒月 なずな 般若湯楽しみにして鬼やらい みずほ 次期宰相の椅子狙いつつ 詩葉 ひもすがら太極拳にパワーヨガ なずな 雲ふんわりと水色の空 みずほ 出航の銅鑼鳴っている花の昼 詩葉 時を忘れてすごす野遊び なずな 平成19年6月10日起首 同 7月5日満尾 |
☆入選 半歌仙「大獅子の」の巻 八城水斎 捌 大獅子の跳ぶかたちして滝凍てり 八城 水斎 なおなお遠し春の足音 広中みずほ ゴージャスなピザの焼けるを楽しみに 原田なずな ミニパーティーに揃いたる客 大鷹詩葉 屋形船浮かべ名月ほしいまま みずほ 虫の合唱ふっと途切れて 水斎 ウ 連れ立ちて上野の森の美術展 詩葉 あなた好みの青いスカーフ なずな バツイチの嫁の得意な拭き掃除 白木 薫風 猫は遠慮し隅で小さく みずほ 茶を運ぶからくり人形すまし顔 なずな 思いもかけぬ値のつきし競り 詩葉 二胡弾ける青年僧に夏の月 薫風 筑波嶺愛でつ浴びる行水 水斎 旅の宿とっときの酒惜しげなく みずほ 郷土料理はどれも逸品 なずな いつかしら雨も上がりて花の夕 詩葉 囀りの中渡る吊橋 薫風 平成20年1月6日起首 同2月6日満尾 |
☆入選 半歌仙「風の歌」の巻 岡部七兵衛 捌 小春日や筑波の山に風の歌 岡部七兵衛 水きらめかし洗う大根 齋藤桂 ひさびさに留学子より便りきて 密田妖子 忘れられてる読みさしの本 結城まゆ 静々と観月楼は客を待つ 浅沼小葦 胸の奥まで沁みる菊の香 七兵衛 ウ 蜻蛉連れ古窯めぐりの旅つづく 桂 チロルハットの似合う助教授 妖子 乙女子は甘いベーゼの夢を見て まゆ 腹を空かせた獏がのっそり 小葦 陰陽師声高らかに加持祈祷 七兵衛 孫誕生を触れ歩く婆 桂 うす絹の雲たなびかせ夏の月 妖子 ミシュランガイド持って巴里祭 まゆ 主治医からメタボ傾向注意され 小葦 鏡抜きする髭の代議士 妖子 老犬はうつらうつらと花の昼 桂 田畑潤す暖かな雨 まゆ 平成19年12月1日起首平成20年1月28日満尾 |
☆入選 半歌仙「ふくらむ辛夷」の巻 棚町未悠 捌 雨やみて空にふくらむ辛夷の芽 棚町未悠 囀り聴きつめざめゆく山 静美也 バースディ春のスカーフ贈られて 八尾暁吉女 動き軽やかケータイの指 斎藤桂 街の底隈なく照らす月今宵 岡部七兵衛 かぼちゃと小豆いとこ煮となる 未悠 ウ 馬の居ぬ南部曲り屋そぞろ寒 美也 同級生に碧眼の嫁 暁吉女 蛮カラもはしかのように恋に落ち 桂 夢を信じて駆けるナナハン 七兵衛 風を切り助走をつけて信天翁 未悠 岩噛む波の白き昂ぶり 美也 異教徒も聖誕祭を楽しまん 暁吉女 凍月を背にパブへ繰り込む 桂 むせび泣くジプシーギター弾き語り 七兵衛 世界遺産に決まる故郷 未悠 花火果て静かになりし子供達 美也 平和な寝息蛸壺の蛸 暁吉女 平成20年3月7日起首 同4月10日満尾 |
☆入選 半歌仙「小正月」の巻 小野芳梅 捌 小正月雑穀粥の熱きかな 稲垣渥子 淑気ほんのり黒の紋服 谷口守枝 島離る連絡船の澪ひいて 石川 葵 テトラポットの鴎西向く 小野芳梅 月今宵オンザロックとモダンジャズ 繁原敏女 胡桃一つを握る掌 梅 ウ 遼かなり紅葉かつ散る伊吹山 渥 忘れるという仕合せもあり 守 薬指わざわざ見せた記者会見 渥 恋の火傷の癒えぬ踊子 葵 天安門アイスクリーム売る屋台 梅 蟻の行列月の影さす 敏 わが町の下に延びてる活断層 葵 伽羅の念珠かブレスレットか 渥 眼科歯科買い物ついでの寺参り 敏 格安切符春のあけぼの 渥 花浴びてはにかみ君のプロ宣言 敏 猫の子じゃれる玉のころころ 梅 平成20年1月15日首尾 |
☆入選 半歌仙「波の音」の巻 大鷹詩葉 捌 陶枕や休むことなき波の音 大鷹詩葉 朱夏の座敷を抜けてゆく風 広中みずほ 寡黙なる庭師の技は見事にて 八城水斎 父子代々守る老松 原田なずな 終電の人を見送る十三夜 みずほ 都会の隅で蚯蚓鳴きおり 詩葉 ウ 爽やかにチェスとワインと愉しまん なずな チャイナドレスのよく似合う女 水斎 幸せの薄そうな肩そっと抱く 詩葉 細く一筋上る香煙 みずほ 杖置きてしばし安らぎ常陸蕎麦 水斎 賢い犬が傍を離れず みずほ 首相立つ月の凍てつく突堤に 水斎 懐手して振り返る過去 なずな どこからとなく聞こえ来るカンツォーネ 詩葉 聖母子像を囲むエンジェル みずほ 花の山お服加減を問われいて なずな 地平はるかに種を蒔く人 水斎 平成19年8月9日起首同9月2日満尾 |
☆入選 半歌仙「地球昇る」の巻 森本多衣 捌 我が住める地球昇るや月の朝 森本多衣 くるり複眼回す蜻蛉 鈴木漠 そぞろ寒父母はいかにか在すらん 在間洋子 小学唱歌ハミングをして 三神あすか 新しき駅舎で記念スタンプを 山名才 現代アート啜る水洟 安丸てつじ ウ 愛犬と鍋の雑炊分かち合ふ 漠 放浪の身に友はいらない 多衣 無一物とても恋慕の灯は消さず あすか 指切り交す島の桟橋 洋子 月涼しよくぞ男は昔事 てつじ 憂さ晴らしにと麦酒ぐいぐい 才 蝦蟇睨む今更俺が変れるか 多衣 背負ひ投げにて柔ら極めん 漠 産土の神の社は深閑と 洋子 かたびら雪も解けて流れて あすか フルートは音色も妙に花明り 才 魂響かせる杜の鴬 てつじ 平成19年12月18日起首 平成20年1月15日満尾 |
☆入選 半歌仙「蟷螂の斧」の巻 福井直子 捌 蟷螂の斧まで淡く枯れにけり 加藤真美 しぐれの濡らす庭の飛び石 二村鉄男 寄せ裂の彩縫い合わせお手玉に 山内多美子 ひぃふぅみぃと指を繰りつつ 福井直子 楼門の高きにのぼる小望月 鉄 新酒携え友の訪なう 多 ウ きりたんぽ母の味にはまだ遠く 真 長距離電話切るにしのびず 真 偶然の出会いとみせて駅で待ち 多 帰りたくない帰したくない 直 国々の歴史うずまくインド洋 真 仏法僧の声と名は別 多 月涼し浮世のしばり解き放ち 直 ニートの息子今も独身 多 欲深のねらい当たらぬ万馬券 真 韃靼の野に春の風吹き 多 はるかなる富士を隠して花霞 鉄 陽炎追いて明日へ駆け出す 直 平成19年11月13日首尾 |
☆入選 半歌仙「川蜻蛉」の巻 福井直子 捌 濃く淡く葉を揺らしおり川蜻蛉 小野芳梅 送りの梅雨のあがりゆく里 福井直子 垣越しに聴くソナチネの滑らかに 芳 梨むく母の横顔やさし 森岡しげる 命一つ生れ出づるあり月まどか 直 案山子すっくと田を護りいて 正木克彦 ウ 旅先の御当地料理ひとり酒 し ただひたすらにかけるケータイ し 流し目のチョイワル男に気もそぞろ 克 惚れた弱みを嘆く寒風 直 分かれ道石地蔵にも雪降りぬ し アンドゥトゥロワで決める順番 直 赤い月無言で仰ぐ原爆忌 し もみの大木泰然と立ち 直 この選挙介護と年金焦点に 克 丘を描けゆく遠足の子ら 克 カリヨンの響く尖塔花吹雪 し 夢大空に満ちてうららか 直 平成19年7月10日首尾 |
☆入選 半歌仙「水平線」の巻 小山百合子 捌 船虫の散ってかたむく水平線 小山百合子 苫屋の軒に干さる甚平 静美也 大家族カメラの前で微笑みて 野崎健 カラオケ好きな祖母は九十 太田ふく 太古より湯の湧き溢れ月の峡 佐藤敏勝 茸籠背に渡る吊橋 子 ウ SLに手を振りながら秋逝かす 也 阿久悠という天才の詩 健 抽斗に盗んだハート溢れてる く アキバ系カフェ萌える美少女 勝 うっかりと河馬の欠伸をうつされて 子 森の小径に迷い込みたる 也 酉の市手締めしゃんしゃん福を寄せ 健 月の屋台に酌みし熱燗 く 胡同(ふうとん)も北京五輪でビルとなり 勝 魚氷に上る方丈の池 子 そぞろ行く前も後も花爛漫 也 都踊りは「よういやさあー」 健 平成19年7月18日起首 同9月20日満尾 |
☆入選 半歌仙「剣玉の」の巻 小山百合子 捌 剣玉のひょいと載りたる文化の日 小山百合子 子らにぎやかに鉢のゆで栗 岡部七兵衛 十三夜岬をめぐる船ならん 沢藤蓑助 丘にぽつんと建ちし銅像 静美也 散策のふところにある鳥図鑑 衛 炭出す橇と擦れ違いたる 子 ウ 雪催マイク片手のリポーター 也 またはぐらかす恋の本命 助 偽りの愛とて神に許し乞い 子 鬼怒の河原に一管の笛 衛 鶴翼の大軍ひたと静まりて 助 村を総出のエキストラ陣 也 安酒場月に汗飛ぶフラメンコ 衛 紫煙の奥に狂う灯取蛾 子 唐突に巨匠黒川紀章逝き 也 靴音ひびく早春の街 助 ふうわりと着る新調の花衣 也 仔猫じゃれ合う午後の縁側 衛 平成19年9月6日起首 同10月30日満尾 |
☆入選 半歌仙「冬落暉」の巻 齋藤 桂 捌 なだらかな尾根際立つや冬落暉 齋藤桂 窓辺の壷に香る臘梅 密田妖子 黙々と墨磨る翁は端座して 岡部七兵衛 インタビュアーも声をひそめる 浅沼小葦 月見舟思いがけなきほどの揺れ 結城まゆ 浜荻の上ふわり薄衣 桂 ウ 裏方も大奮闘の文化祭 妖子 主演女優にひと目ぞっこん 七兵衛 放つ矢をちょっと外したキューピッド 小葦 ロトシックスはキャリーオーバー まゆ 溜息と夢ないまぜて独り酌む 桂 籠の鸚鵡と時にたわむれ 妖子 荒神輿前へ後ろへ昼の月 七兵衛 氷あずきに虫歯ずきずき 小葦 英雄も偉人にもある泣き所 まゆ 実家にいまも残る落書き 妖子 パンダ舎の柵の中まで花吹雪 小葦 上野の森の春は爛漫 七兵衛 平成20年1月30日起首 同 3月16日満尾 |
◆平成連句競詠2007
入賞 次席 歌仙「曼珠沙華」の巻 捌 間瀬芙美 曼珠沙華笑ひすぎたる赤さかな 郷正子 宙にふるへる蜻蛉の群 矢崎藍 三日月を高層ビルの西窓に 郷 チャイムが鳴つてピザの到着 芙美 英語塾プリント配り始めたる 郷 珊瑚礁見る夏の約束 藍 ウ 虹立ちて迦陵頻迦のありどころ 郷 恋のタブーを知らぬ少年 藍 ペディキュアの女の家を突き止めて 郷 料理上手で口説き上手で 美 一瞬に街を埋めし火山灰 藍 ヘリコプターに記者と大臣 郷 ネクタイをゆるめ飲んでる安定剤 芙 師走の月と雑踏の中 藍 志功展開く画廊の灯が届き 郷 主の席に猫が居座る 芙 花衣亡き母さんにようも似て 藍 今年初めて茶摘唄きく 郷 |
ナオ ごそごそと紙袋から三宝柑 芙 分水嶺を越える特急 藍 幸ひのすむ国あると風の言ふ 郷 鼻ピアスして直木賞とり 芙 芳醇な果実をもげば罪深く 藍 御息所あはれもののけ 郷 羅に薄紫の糸印 芙 ほら翡翠が橋をかすめた 藍 自転車を草に倒して下校の子 郷 世界遺産となりしHIROSHIMA 藍 奥の間の古時計鳴る真夜の月 芙 用を足しつつひしと深秋 郷 ナウ 朴の葉の散る細道をあすの旅 藍 曲折を経て合併となり 芙 水底の鯉ゆつくりと向きを変へ 郷 東塔霞む曙の空 藍 夢あまた浮かびつ消えつ花の宴 芙 ロストボールを探す弥生野 執筆 2006年9月14日起首 11月1日満尾 fax文音 |
◆国民文化祭2007とくしま
☆連句協会会長賞 歌仙「土壁へ」の巻 京都府 齋藤 桂捌 土壁へ日はまっすぐに犬ふぐり 齋藤 桂 初音きかせる二羽の鶯 八尾暁吉女 春愉し夢は大きくふくらみて 岡部七兵衛 やっと見つけたぴったりの靴 依子 珍しき顔もまじりて観月会 暁 実る瓢箪めでる異国語 桂 ウ 振り向かず迷わず蛇は穴に入る 依 色即是空座禅組む朝 衛 缶詰の社員研修あと少し 桂 メールアドレスちゃっかりと聞く 暁 猫を抱く彼女は魔女といううわさ 衛 古城に巣くう愛の亡霊 依 月高くわが影とゆく肝だめし 桂 暑中休暇は七半の旅 暁 橋下の鳴門海峡渦を巻き 依 政財界につづく激震 衛 花明り父祖よりの地を守り継ぎ 依 お伊勢参りを楽しみにして 暁 ナオ ゆったりとふらここ揺れる昼下 衛 全快祝い終えて安らぐ 桂 アドバイス禁酒禁煙禁ゲーム 暁 引越荷物とどく新宅 桂 雪の夜傍にあなたが居てほしい 衛 動悸はげしき毛衣の裡 依 恐いより抑えきれない好奇心 暁 棚に並んだウォツカテキーラ 桂 濃く低く流れるチェロはヨーヨーマ 衛 何時の間にやら嬰はぐっすり 依 清らかな月の光を身にまとい 衛 古道呑み込む秋の連山 桂 ナウ ものを焼く煙刈田にたなびいて 依 美味しいパン屋兄弟の店 暁 晴天につられ出かける隣町 桂 碑探し地図を片手に 依 透垣の上に聳える花大樹 暁 世界の平和祈り連凧 衛 2007年2月19日起首 3月28日満尾 |
☆第22回国民文化祭徳島市実行委員会奨励賞 歌仙「秋立つや」の巻 東京都 岡部七兵衛捌 秋立つや風と渦との交響詩 岡部七兵衛 潮の香りの満つる有明 城 依子 新絹を絞る手際の鮮やかに 多村 遼 画紙を飛び出す嬰のクレヨン 澤藤蓑助 ペーチカがとろとろスープことことと 依子 麓の村に橇の鈴の音 七兵衛 ウ 木の屑の中からこけし抱き上げて 蓑助 いつかはノラになると知りつつ 遼 愛されるふりをつづける日記帳 七兵衛 屋根裏部屋は夢幻空間 依子 おしゃべりな九官鳥は籠を抜け 遼 大峰に入る老いし修験者 依子 月涼し剃り落としたる長き髯 蓑助 退院祝い友とシャンパン 七兵衛 あちこちに出湯の煙り漂いて 依子 駅の広場にひるがえる旗 七兵衛 外つ国の花にふるさと偲ばるる 遼 殿様蛙こんなところに 依子 ナオ 春日和大臣の椅子心地よく 七兵衛 錬金術師そっと目配せ 遼 ネジ巻かれ踊るブリキの玩具達 依子 神社の裏に子供らの基地 七兵衛 三つ編みの転校生が来るらしい 遼 めぐり合うことこそが運命 依子 時雨降る数寄屋橋には占い者 七兵衛 ため息白く不景気の底 遼 登り窯しんと火入れを待っており 依子 祖父に教わる秘伝数々 七兵衛 吟声はやがて月へと届くらん 遼 菊人形がふっと微笑む 依子 ナウ 店番の猫の尻尾のそぞろ寒 七兵衛 数学よりも哲学が好き 遼 果てしないメビウスの帯たどる旅 七兵衛 乞食袋に句帖一冊 蓑助 乾坤に曇りはあらず花万朶 依子 いのち育む日差しあたたか 遼 2006年8月8日起首 9月28日満尾 |
☆入選 歌仙「背負はれて」の巻 岩手県 小山百合子捌 背負はれて太鼓の通る深雪かな 小山百合子 ふくら雀の宿る軒先 城 依子 百号の画布に絵筆を走らせて 岡部七兵衛 幾何が得意な新入りの弟子 澤藤 蓑助 乾杯の音頭に月の上るらん 依子 萩がこぼれる庭の四阿 百合子 ウ 進むありためらふありて赤とんぼ 蓑助 ポニーテイルの小悪魔が行く 七兵衛 戯れの恋と知りつつ身を焦がし 百合子 踏み外したる宮の磴 依子 この地球ミシと壊れる音がする 七兵衛 水を求めて象の大群 蓑助 少年は野営の支度粛々と 依子 月影映すサイダーの泡 百合子 ふるさとの柱時計のねぢを巻き 蓑助 継ぐと決めたる伝統の店 七兵衛 阿波藍の甕匂ひ立つ花の雨 百合子 舟漕ぐ人の唄がのどかに 依子 ナオ 朝食は二匹の目刺お味噌汁 七兵衛 地下の金庫にうなる現ナマ 蓑助 ゴシップに群がってくるパパラッチ 依子 読書専心眼鏡特製 百合子 天井に染みと化したる冬の蠅 蓑助 老師のくさめ響く僧房 七兵衛 かたかたと絡繰り人形茶を運ぶ 百合子 腕組みあひて覗く時代屋 依子 幸せに胸膨らます初デート 七兵衛 壁画の美女は化粧直しに 蓑助 漂泊の旅の果てなる月今宵 依子 わだつみ深く落鯛の夢 百合子 ナウ 指定席横に南瓜が並びをり 蓑助 何度やつても解けぬ知恵の輪 七兵衛 押し寄せていま終章に入るボレロ 百合子 イナバウアーは演技最高の出来 依子 花見馬車ゆらりと子らを零しさう 七兵衛 綿菓子のごと春の浮雲 執筆 2006年12月9日起首 3月18日満尾 |
☆入選 歌仙「冬銀河」の巻 東京都 岡部七兵衛捌 轟ける鳴門の海や冬銀河 岡部七兵衛 寒を楽しむ父と子の笛 齋藤 桂 エッセイを折にふれては書き溜めて八尾暁吉女 心豊かにコーヒーを挽く 城 依子 卓上に観月会の招待状 桂 ころりころころ大まつぼっくり 衛 ウ 蜻蛉飛ぶ小道たどれば比丘尼塚 依 湯治の里で万屋を継ぐ 暁 ゆで卵ふたりで分ける新所帯 衛 幼馴染みはちゃん付けで呼ぶ 桂 本箱の隅にちょこんとスヌーピー 暁 ガードの下にも人生のあり 依 きりもない憲法論議月暑し 衛 似合うと言われ藍の甚平 桂 箒目の殊に清しき石の庭 依 数羽の鳥の遊ぶひととき 暁 酔うほどにに花の奥へと迷い込む 桂 耳をくすぐる春風の歌 衛 ナオ いたずらなニンフの揺らす半仙戯 暁 ベッドの中で嬰はぐっすり 依 夢託し小さき布靴作り上げ 桂 飢餓に苦しむ難民の村 衛 神在す遠嶺うっすら雪化粧 依 素麺を干す美しき顔 暁 突然に炎のごとき恋に落ち 衛 勢いづいた株価大跳ね 桂 ブログなどちょちょいのちょいの喜寿白寿 暁 仲間を募りシルクロードへ 桂 月天心しんと鎮もる遺跡群 依 なよと靡ける薄ひとむら 衛 ナウ 肌寒く漱石猫をふところに 依 歯科の予約はあさっての午後 暁 赤青のしるしけのカレンダー 衛 ピエロくるりと動き軽やか 桂 声かけて行きかう遍路花の坂 暁 過去も未来も陽炎の中 依 2007年1月15日起首 2月17日満尾 |
☆入選 歌仙「遠き世の」の巻 茨城県 城 依子捌 遠き世の色しみじみと蓮咲けり 城 依子 蝉時雨ふる城址公園 八尾暁吉女 誘われてヨガ教室を試すらん 多村 遼 一歩踏み出す新しい靴 齋藤 桂 少年の夢ふくらみて月さやか 岡部七兵衛 秋の真っ直中をSL 依 ウ 小鳥来てツバメは帰る阿波の国 女 尼僧の偲ぶ出奔の過去 遼 胸底の燠の欠片を愛おしみ 桂 トワイライトに低くボサノバ 衛 シャンパンの泡がはじけたがっている 依 新築祝い長い挨拶 女 寒月を指すご自慢の髭を撫で 遼 凍滝を背に眠りたる村 桂 ゆっくりと柱時計の螺子を巻く 衛 あるかもしれぬ日本沈没 依 花盛り開きしままの山家集 女 若駒を馳せ風をつかまん 遼 |
ナオ クレープ屋手持ち無沙汰な目借時 桂 耳鼻ピアス赤いバンダナ 衛 平静をぐるぐる回す洗濯機 依 宇宙船より届く暗号 女 冥王星ひとりぼっちは寂しかろ 遼 祭囃子を病窓に聞く 桂 蜜豆と喧嘩の好きな神田っ娘 衛 セレブ婚などぽいと蹴飛ばし 依 ポスターの立て看板が転がりて 女 総裁候補似たり寄ったり 遼 石庭に佇みて待つ小望月 桂 そこはかとなく匂う白菊 衛 ナウ うそ寒き遺影の前の旅鞄 依 寅さんフアン今だ根強く 女 ぶうらりと行く人情の残る里 遼 凪の入江に舫う舟影 桂 千年の花ふりしきる神の庭 衛 何やらゆかし和紙の春灯 女 2006年7月19日起首 10月3日満尾 |
☆ みのりさんの短歌もご報告。2007年度、「小野葉桜短歌賞」「優秀賞」と「第一回藤田世津子賞」のダブル受賞。三首連作です。
この雲はいずれ流れて雨になるあるいは怒る 神のみぞ知る
ジョーカーを捨てたき日々の長過ぎて脇目もふらず刻む小松菜
いま茜雲は燃え尽きわたくしにつながる道を見失いたり
◆平成19年『連句年鑑』(連句協会 発行)掲載 WEBめぎつね座
KUSARI 『たのしい三句集』 一月一日(日) (No.51655) 旅衣しつけし糸をほどくらん 小晴 一期一会の心豊かに ザリ 恵まれて友と学びし戦後なる ちいばば 二月十五日(水) (No.53062) 涼しき影をおとす八つ橋 たすけ あの恋もこの恋もみな忘れはて 藍 貝殻骨に刻まれた傷 暢 二月十七日(金) (No.53131) 細やかなネイルアートがお気に入り 桂 ふと熱をもつメール打つ指 ひわ ここからは恋これまでは愛という 不用之助 三月十六日(木) (No.53856) 荒れ狂う海の色したタイ結ぶ 暢 近くて遠い半島の国 あづさ まだ熱が38度で動けない 氷心 五月十九日(金) (No.55572) ロボットの目に君が一〇〇コマ ふさ子 好きだよと言えばエコーが次々と 蕗 水辺に咲いた水仙の花 カンちゃん |
七月八日(土) (No.57353) アンデスの険しい谷に羽広げ わび太 ケーナは歌う千年のなぞ 風 ハンプティ卵は元にもどらない のら 七月十一日(火) (No.57430) 大統領に誕生日来て 雨乞小町 タリバンとカスタネットとアルカイダ ななちゃん 真夏の夜のジャズのセッション 道草 八月四日(金) (No.58114) ミミズが開く作戦会議 ザリ 葡匐する迷彩服は泥まみれ ばらずし 国境に咲く秋の七草 たつみ 九月一日(金) (No.59115) 考古学一万年後の展示室 麦 人類という愚かなるもの 蕗 信じれば神はイワシの頭にも 彗 平成十八年一月一日より十二月三十一日 (KUSARI 51655番〜62433番)より抜粋 於・HP矢崎藍の連句わーるど総合BBS |
◆国民文化祭2006やまぐち
☆実行委員会会長賞 半歌仙 「秋嶺の」の巻 三重県 多村 遼 捌 秋嶺のはじまるところ無人駅 多村 遼 おとぎ話のやうな初月 城 依子 じっくりと渋皮付きの栗を煮て 山寺たつみ 耳傾けるピアノエチュード 佐藤ふさ子 横文字の看板多きビル街に 齋藤 桂 塵をしづめて散水車ゆく 遼 ゥ 夾竹桃いくさの記憶まざまざと 依 尼僧の胸にゆれる十字架 み 異国での恋はたやすく燃えるもの ふ 夢追ひかけて迷ふ城跡 桂 不意打ちのごとく飛び立つ大鴉 依 降圧剤を処方する医師 み 月冴えてトリノをめざすアスリート ふ 朽野を縫ふ道はどこまで 桂 龍頭巻く父の遺愛の腕時計 遼 篭の仔猫はうつらうつらと 依 おいでませ花いっぱいの周防の宿 桂 天地蒼々風光る沖 み 平成17年10月23日起首 11月21日満尾 |
☆ 入選 半歌仙 「万葉仮名」の巻 京都府 齋藤 桂 捌 鹿鳴くや万葉仮名の道しるべ 齋藤 桂 庭下駄の音軽き待宵 城 依子 投げ入れの木通の蔓を切りつめて 山寺たつみ 鑿跡残る手作りの卓 佐藤ふさ子 和やかなクラブハウスのチェス仲間 多村 遼 羽子板市へ誘われており 桂 ゥ 明烏寒波を連れてやってくる 依 もしやの予感浮かぶ面影 み 怖いほど君の想いのまっしぐら ふ バンジージャンプ達人の域 遼 見はるかす海はコバルトブルーにて 依 外輪船の煙たなびく ふ 巴里祭の月に歌声とどくらん 遼 酒をなみなみカットグラスに 桂 懐かしい一別来のこの小部屋 み すり寄ってくる留守番の猫 依 落慶の稚児行列は花を浴び ふ 周防の老舗応えのどらか み 平成17年9月17日起首〜10月15日満尾 |
☆ 入選 半歌仙 「ドロップに」の巻 岩手県 小山百合子捌 ドロップに日差の透る木の芽時 小山百合子 つばくらめ来るアトリエの軒 中本 七水 丹念に春挽糸を括るらん 城 依子 取りし湯呑に揺れる茶柱 百合子 久闊の友と眺める海の月 七水 べったら市に誘われており 依子 ゥ 秋深き机の上に福音書 百合子 鞄の底で着信の曲 七水 国境へ向けてひたすら馬を駆る 依子 いざロシナンテ姫を助けに 百合子 芸一途おしどり夫婦人気出て 七水 父の遺影がふっと微笑む 依子 月に濡れ大きく育つ巴旦杏 百合子 きもだめしには竹刀片手に 七水 酔うほどに自慢話のきりもなし 依子 壁に並んだ汽車のプレート 百合子 城山のそよ風に花さんざめく 依子 遠足の子が通る組橋 七水 平成18年3月2日起首 同31日満尾 |
☆ 入選 半歌仙 「蔓草の」の巻 茨城県 城 依子 捌 蔓草の籠にならんと枯れており 城 依子 身を切る風に鎮もれる城 岡部七兵衛 石窯で自慢のパンを焼き上げて 山根 敬子 笑みうつくしきグラビアの子等 多村 遼 虫の音にあわせゆらゆら月見舟 衛 後の袷は仕立て下ろしで 依 ゥ 萩盛る町に松陰門下生 遼 差出人のなくて恋文 敬 まどろみの中の逢瀬に縋るらん 依 合わせ鏡に薄明の獏 遼 G線の切れたヴィオロン壁際に 衛 ジプシー達の宴もたけなわ 敬 果てしなき熱砂の月を友として 遼 破れ団扇につのる望郷 衛 人生の耐震強度想定外 依 姿勢崩さぬ托鉢の僧 衛 花の香にフランス窓を開け放ち 敬 オウムと語るほろ酔いの春 遼 平成18年1月14日起首2月19日満尾 |
☆ 入選 半歌仙 「漂泊の雲」の巻 茨城県 城 依子 捌 漂泊の雲の白さや寒明ける 城 依子 遠会釈して麦を踏む人 小山百合子 初雛を広い座敷に飾るらん 中本 七水 知らず知らずのうちにハミング 依 水馴竿させば玉兎の影ゆらぐ 百 秋を惜しみて続く献杯 七 ゥ 粛々と時代祭りの主役たち 依 べっこう飴に透ける御神馬 百 Gパンのお臍ちらりと可愛ゆくて 七 胸ときめかす髭のおじさん 依 公開の講座はアンナ・カレーニナ 百 青葉若葉の匂い立つ頃 依 月涼し風ふところに露天風呂 七 錦帯橋を越えるニーハオ 百 禅僧の取り持つ縁で姉妹都市 七 鵞鳥の卵孵化が始まる 百 皇室の慶事に花の咲き揃い 依 仰ぐ高嶺に架かる初虹 七 平成18年2月12日起首3月1日満尾 |
☆ 入選 半歌仙 「春疾風」の巻 東京都 岡部七兵衛捌 志われも晋作春疾風 岡部七兵衛 鏑矢のごと来るつばくろ 淀川しじみ 瓶に挿す勿忘草が咲き出して 小山百合子 好きな詩集をひとり繙く 城 依子 牧童の笛につられて昇る月 多村 遼 えっちらおっちら蟷螂の影 しじみ ゥ 今年米神に供えて安らぎし 依子 エステサロンは予約満杯 百合子 お手軽な恋をレンタルする女 遼 別れの夜に燃やす残り火 七兵衛 心得の猫の寝場所はサモワール じじみ パッチワークの躾糸引く 百合子 月待てばことに涼しき波の音 依子 戦を語る翁の泡盛 遼 配水車砂埃たつ基地の街 しじみ 自分探しの旅を続ける 依子 花びらを纏って潜る大手門 百合子 奴さんらし蒼天の凧 遼 平成18年3月10日起首3月30日満尾 |
半歌仙 「捨雛」の巻 長野県 山寺たつみ 捌 捨雛や女人の旅の幾山河 山寺たつみ 童の唄に光る芽柳 新生 逢人 万愚節眉唾電話期待して 駒村 安雄 資料の上の猫を追ひ出す 樋田 利彦 月に酌む肴は友の帰国譚 人 評価分かれる菊の掛軸 雄 ゥ 倒産の旧家売立て秋の末 み 小町娘が眠るホスピス 人 燃えあがる一途な想ひ抑へかね 雄 また持ち帰る渡せない文 み 聖堂のステンドグラス鮮やかに 人 錦帯橋に基地の憂鬱 雄 夕立も過ぎて蛇の目を斜に持ち み 蟾にも遭ひし月の縁台 雄 名物の団子楽しむ老夫婦 人 尼僧のお茶に心安らぐ 雄 花の下笑はせながら啖呵売 み 蝶戯れる国宝の城 雄 平成18年3月15日首尾 |
半歌仙 「一本の縄」の巻 岩手県 小山百合子 捌 一本の縄の垂れたる寒さかな 小山百合子 藁編む土間にこもる雪の香 淀川 しじみ せせらぎのひそかな唄に耳かして 岡部七兵衛 探鳥会は磁石頼りに 多村 遼 名園の白砂鎮もり月今宵 城 依子 待ちに待ちたる新酒到来 雨乞 小町 ゥ ボランティア人形劇に木の実降る しじみ ペットの仔豚リボン結んで 百合子 逞しき胸で可愛くなる女 遼 夢の中まで歓喜天立つ 七兵衛 ライブドア株で儲けた絶頂期 小町 後生大事に蛇の抜け殻 依子 月の背戸水鉄砲が落ちてゐる 百合子 てるてる坊主軒にゆらゆら しじみ ふるさとへ思ひ果てなき草枕 七兵衛 汽笛を曳きて走るSL 遼 宇野千代の笑顔を偲ぶ花衣 依子 城山映し春田かがやく 執筆 平成18年2月7日〜3月10日首尾 |
◆オフ会2005,5,21
オフ会作品 当日詳細報告 T 歌仙「虹立つや」の巻 藍 捌 虹立つやKUSARIiなかまの太極拳 小町 ヨットゆるりとすべる湾内 みろく パイナップルジュース一気に飲み終えて 不用之助 隣の犬に見張られている 々 名人戦長考に入り月まどか カンちゃん 金木犀の香る街道 蕗 ウ あてどない旅に出会いし秋茜 カ 別れ話をいつ切りだそう 和 ショパン弾く広い背中が意地っ張り 々 窓を斜めに降りしきる雨 藍 悪いけど掃除洗濯放りだし ひまわり リニモに乗って通う万博 ばらずし 月冴ゆる上求菩提に下化衆生 みろく 俵の型にむすぶおにぎり 小町 人生は四捨五入して合格点 ザリ 白く泡だち川は流れる 々 妹が花びら追ってかけてゆく ふさ子 遠く聞えるたんぽぽの笛 風 ナオ忘れたきことの数々弥生尽 麦 おから炊いてるキッチンの昼 桂 反日のデモにもめげず靖国へ 和 要観察と医師の診断 ふ ケイタイに絵文字ばかりのラブレター 々 涼しい夜はベッドきしませ 藍 「猟奇的僕の彼女」の力瘤 小町 一目散に渡る吊り橋 麦 放流を告げるサイレン鳴り響き カ 平和憲法守らんと月 藍 竹籠にあふれやさしき野紺菊 ばらずし こっそり酒を舐めるやや寒 々 ナウマジョルカ島広場の踊りはてもなく 風 ガソリンゲージふいに点滅 ザリ 生命線マジックペンで書き足さん ふ 老々介護頬なでる風 蕗 浮舟の巻をひもとく花の陰 桂 見え隠れする草むらの雉 ザリ 2005年5月21日首尾 於 蒲郡 南風荘 |
オフ会作品 U しりとり連句14 雨乞い小町さん来日歓迎 「小町娘」の巻 藍 捌 夏匂う小町娘のえくぼかな 藍 波に輝き海桐(とべら)花咲く 和 くるりんと船は向き変え遠くなり ザリ 理科室の窓友はK・S ばらずし エスプレッソ淹れて豊かな昼下り 蕗 林檎箱からのぞく捨て猫 芳梅 皓々と月の光のこぼれおち ひわ 猪口の新酒に嫉妬渦巻き ふさ子 キスひとつふたつめからはあの部屋で 小町 デルフトの街雪にしずもる 風 るるるる電話がなぜかつながらず ひまわり ずり落ちそうな春のスカーフ 不用之助 古寺へ磴ゆるやかに飛花落花 桂 かわずの声をきいてゆく道 カンちゃん 2005年5月21日首尾 於 蒲郡 南風荘 |
◆2006年連句年鑑(連句協会)掲載 WEBめぎつね座
KUSARI 『たのしい三句集』 一月一日(火) (No.34950) みぞれから雪の知らせの除夜の鐘 藍 蒼い地球に添える花束 雨乞小町 ボンジョルノここから海が見えますよ 風 三月十八日(金) (No.43369) 花嫁は抱き上げられて新床へ ちいばば 掃除はNOの札かかるノブ ふさ子 ジキルからハイドへ変わる飲み薬 麦 三月二十一日(月) (No.44454) まだ高齢者などと言うなよ ク ン 鶏小屋に山と積まれた無精卵 不用之助 蛇穴を出て無銭飲食 ザ リ 六月十一日(土) (No.46470) 河童の子らも初恋のころ タヌ公 大切なビー玉ひとつポケットに 桂 透明な風吹きぬける道 カンちゃん |
十月二十五日(火) (No.49586) 進化したのかホモサピエンス の ら 雪月花猪鹿蝶と惚けたる たすけ 酒に昏々恋に昏々 藍 十一月一日(火) (No.49754) 焚火を囲むなつかしい日々 ばらずし ひび割れに膏薬つめるしかめ面 ふさ子 活断層に家を建てるな 和 十一月五日(土) (No.49832) 風穴ごしの北斗七星 小 晴 こなからのほろ酔い機嫌村境 たつみ お地蔵さまに深々と礼 小 晴 十二月二十日(火) (No.51299) アメリカに年次改革要望書 道 草 他人のシマを荒らす親分 はやお 踊り場をいつのまにやら外されて 暢 平成十六年一月一日より十二月三十一日 (42819番〜51655番)より抜粋 於・HP矢崎藍の連句わーるど総合BBS |
◆国民文化祭2005ふくい
☆文部科学大臣奨励賞 歌仙 「佐保姫の」の巻 東京都 岡部七兵衛捌 佐保姫の土踏む音や雑木山 岡部 七兵衛 時空を超えてふわと初蝶 城 依子 雛の客ひねもす窓の華やぎて 雨乞 小町 螺鈿の筥に仕舞う琴爪 多村 遼 月影をくだきて大河とこしなえ 小山 百合子 注がれし徳利ましら酒とか 淀川 しじみ ウ 進退を賭け秋場所にのぞむらん 依子 風もやさしい蒙古草原 七兵衛 あなたへと紙飛行機はゆれながら 遼 ジェラシーという恋の妙薬 小町 朗々と新進女優のオペレッタ しじみ 茶房の隅に尉と姥あり 百合子 露店市西瓜をどさと買いこんで 七兵衛 避暑地を目指し月の国道 依子 誘拐をされし気弱なエイリアン 小町 うつらうつらと転寝の夢 遼 たっぷりと花そそぎませ義士の墓 しじみ ビルの谷間を労働歌ゆく 百合子 ナオ陽炎の罠にはまって物忘れ 依子 箪笥預金をまた移し変え 七兵衛 羽二重の着物はむろん福井産 遼 願い事なら無病息災 小町 矍鑠と雪けむり蹴り斜滑降 しじみ 手を取り合って狐火を見に 百合子 好きですの小さな声は闇の中 七兵衛 ルパンに心盗まれており 依子 黄金比いと美しき数値にて 小町 千の綱垂れ走る帆船 百合子 たちまちに雲の切れたる月まどか 遼 湯加減いかがとちちろ窺う しじみ ナウ新米の炊ける香りが嬉しくて 依子 喜寿の親父は杜氏一筋 七兵衛 ちかごろは趣味の画才も認められ 遼 巣箱賑わう中庭の景 しじみ 花の中サンピエトロに鐘の鳴る 小町 そぞろ歩きの暖かき宵 百合子 平成17年2月20日起首4月3日満尾 |
☆福井県議会議長賞 歌仙「万緑」の巻 香川県 田岡 弘 捌 万緑や地図には赤き現在地 田岡 弘 声をかぎりと鳴くは初蝉 多村 遼 手づくりのパイの思はぬ出来映えに 弘 ベストセラーは読みかけのまま 遼 天心を皓々として望の月 弘 小鳥放てば風になるらん 遼 ウ 爽やかにさざなみ寄せる浜辺には 弘 会釈を交す妙齢のひと 弘 片恋の痛みの残る日記帳 遼 涙の痕にいつか微笑み 弘 黙々と戦禍の村に井戸を掘り 遼 神に祈らん世界平和を 弘 月冴えて歓喜の歌を高らかに 遼 スノータイヤの威力抜群 弘 ブーム追ふ秘湯めぐりのカメラマン 遼 心にとめる一瞬の技 弘 初花のあたり仄かなにほひして 遼 何にたとへん春のあけぼの 弘 ナオ若駒に少年の夢果てし無く 遼 自由自在にタイム・スリップ 遼 古文書の謎にすっかり嵌り込み 弘 壁の染みさへ物の怪に見ゆ 遼 泣く子にはとても叶はず買ふ金魚 弘 雨宿りして過ごす夕立 遼 ヨン様にやまとなでしこ奪はれて 弘 脇目も振らず愛はひとすぢ 遼 抱き合ふただそれだけで幸せと 弘 不意に扉を叩くのは誰 遼 雲間より洩れゐる月の永平寺 弘 坂の途中で拾ふひょんの実 遼 ナウ川土手に聴くフルートに秋更けて 弘 キャッチボールも懐かしき父 遼 SLの窓に景色の移りゆき 弘 旅にしあれば憂さも吹っ飛ぶ 遼 けふよりも若き日はなし花に酌み 弘 遥か彼方へ霞む連山 遼 平成16年7月1日起首8月2日満尾 |
◆2006年連句年鑑(連句協会)掲載 WEBめぎつね座
KUSARI 『たのしい三句集』 * (No.34950) 桜の下に埋まる屍 風 攻め窯のまだほのぬくき春の宵 ミャーママ 逢えばとろりと月も溶けたわ 藍 * (No.35296) オスライオンの眠ってるだけ R 終電が冬の星座を分けて行き 柳 雪 セロ弾きの窓叩く木枯し 晴 * (No.35320) 内緒話が聞こえないとは 不用之助 人呼んであそこは「おほほ幼稚園」 タヌ公 とほほとほほで日が暮れてゆく ザ リ * (No.35462) どうしていいの戦争をして ザ リ マスコミが右へ右へと泳いでく の ら いびつな壜が流れ着く浜 もみじ * (No.39083) 山毛齧リを守る合宿打ち上げ日 たつみ メモに書かれたメールアドレス 桂 砂時計流れはじめた恋のつぶ ふさ子 |
* (No.38249) 老いらくの恋によばれた救急車 風 見つめただけで上がる血圧 兎 中東の石油が決め手となる株価 蕗 * (No.40443) 会わなけりゃ綺麗なままの君だった ひ わ 楼蘭の妃も胸にひとこと タヌ公 着メロに永き眠りは遮られ ふさ子 * (No.40682) 懐中時計螺子を巻く人 カンちゃん 逆回り空回りあなたが遠い あおゆき コスモスの野にちぎれゆく雲 彗 * (No.41168) 季節外れの蛇がするりと 麦 遊歩道かさりこそりと枯葉鳴り 霞 愛しい人が逝って三年 小 町 平成十六年 一月 一日より 十二月三十一日までから抜粋 (於・矢崎藍の連句わーるど総合BBS) |
◆2004 鎌倉宮奉納全国募吟
-3句目を付けてください Linked-Verse Contest (主催2004 鎌倉宮奉納連句実行委員会)
○ 3句目の575を付けてください 1.(打越)夕立の追憶濡れている背中 2.(前句)水彩絵の具ぺリエにて溶く ---------------------------------------------------------------------- 特選6句(50音順)より 深夜二時割れたグラスを片付けて 豊橋市 青山みのり アメリカのイラク解放ままならず 香川県 田岡 弘 入選句19句より 花の窓カミヒコーキはとびだして 三重県 多村 遼 そこはかとミントの香り漂いて 茨城県 城 依子 |
◆国民文化祭2004ふくおか
☆文部科学大臣奨励賞 半歌仙「白蓮」の巻 香川県 田岡 弘 捌 白蓮のそよぐや戦なくならず 田岡 弘 波紋のこして消ゆる翡翠 多村 遼 胸中に秘策をひとつ温めて 弘 バッターボックス包む歓声 遼 野も山も月のしづくに煌けば 弘 新酒の香りことのほか良し 弘 ゥ 移ろひの秋を異国に惜しみつつ 遼 触れる手と手にはしる衝撃 弘 永遠の愛を紡いでゆく二人 遼 終り気になる推理小説 遼 懸案の拉致の解決ままならず 弘 玄海はるか浮かぶ島々 弘 月冴えて御仏の顔おだやかに 遼 恩師の偉業しのぶ襖絵 遼 客席にカーテンコールいつまでも 弘 浮かれし猫のよぎる裏町 遼 うたかたの今生なれば花に酔ひ 弘 朝寝の夢にふるさとの母 遼 平成15年7月25日起首8月15日満尾 |
☆国民文化祭実行委員会会長賞 半歌仙「落椿」の巻 兵庫県 三神 あすか 捌 沈黙の地を炎(も)えたたす落椿 三神あすか 雨の霽れるたる寒明けの径 多村 遼 漣波へえり挿す小舟漕ぎ出でて あ オカリナを吹く子ゆきつもどりつ 遼 ぽっかりとビルのはざまに月今宵 あ 濃き珈琲の香り身に入む 遼 ゥ 文机に昼をまどろみ去来の忌 あ 菊慈童あれ夢幻舞ひたる 遼 つつがなく共に金婚迎へんと あ 炭つぐ尉に姥のねぎらひ 遼 人道といふ義を鎧ひ派遣隊 遼 旅のメールもドット・JP あ 有明の月を追ひかけ登山バス 遼 誰を呼ぶのか不如帰しば鳴き あ ああ明治大正昭和遥かなり 遼 八重の潮路に風は百態 あ 花うかべ螺盃交さん志賀島 遼 神の絵筆にかかる初虹 執筆 平成16年2月12日起首22日満尾 |
☆福岡県議会議長賞 半歌仙『ラムネ菓子』の巻 三重県 多村 遼 捌 晩夏光セロファンに透くラムネ菓子 多村 遼 藍の浴衣に帯もきりりと 田岡 弘 手と手と手千年杉を囲むらん 遼 雄々しくなりて駈けてゆく駒 弘 けふの月待てば地平のきはやかに 遼 汽笛身に入む国境の村 弘 ゥミレー作落穂拾ひの謎めきて 遼 エアメールには書けぬ真実 弘 酔ふほどに焦がれせつなき胸のうち 遼 鬼女の根付は垂涎の的 弘 万策はつきて株価もままならず 弘 柝の音も高く夜回りのゆく 遼 寒行の僧に鋭き剣の月 弘 山また山の遠きふるさと 遼 こんなにも高いか父の肩車 弘 耳をくすぐる風のやはらか 遼 玄海をまなかひにして花の宴 弘 うつつの夢に双蝶の舞ふ 遼 平成15年8月2日起首10月10日満尾 |
☆苅田町議会議長賞 半歌仙「無心といふは」 香川県 田岡 弘 捌 綿虫や無心といふは難しく 田岡 弘 静寂の果てに眠る山並 多村 遼 だし抜けにドアを敲くは誰ならん 弘 プロローグにはチェロの独奏 遼 叢雲を解き放たれしけふの月 弘 犬の迎へる木犀の駅 遼 ゥ 碧い眼も秋の祭の行列に 遼 片言なれど愛の告白 弘 願わくは時よ止まれと抱きあひ 遼 うつつに返る警策の音 弘 フセインの夢の終わりし穴の中 遼 地平線へと一筋の道 弘 月涼し秘蔵の酒を囲みゐて 遼 軒の忍に想ふいにしへ 弘 神さびる香椎の宮をおとなへば 弘 鷹のやうやく鳩と化す頃 遼 大河いま滔々として花筏 弘 画布いっぱいに満ちてゆく春 遼 平成15年11月21日起首12月22日満尾 |
☆福岡県連句協会会長賞 半歌仙「夢育つ」の巻 茨城県 城 依子 捌 深秋や湾に真珠の夢育つ 城 依子 マスト影曳く月の突堤 小山百合子 風炉名残遠来の友正客に 齋藤 桂 雅びに掠る筆は誰の手 山寺たつみ 少年のハスキーヴォイス変声期 多村 遼 夏色の街走り続ける 依 ゥ誘われて四万六千日詣で 百 餌をねだり寄るひと群の鳩 桂 静かさが戻る戦禍の村の午後 み ブルカの裡の瞳清しく 遼 赤い酒呷りて共に堕ちゆかん 依 闇の深さに軋む階 桂 月冴ゆる鯉沈々と眠るらし み スケート靴が少し窮屈 百 幼な顔物言いどこか大人びて 桂 きりきりと巻く機関車の捻子 百 英彦山へ久女偲ばん花の旅 遼 紅緒に残る白き春泥 み 平成15年11月6日起首12月13日満尾 |
◆国民文化祭やまがた2003
☆国民文化祭実行委員会賞 半歌仙 『木歩の忌』の巻 香川県 田岡 弘 捌 青柿のままに落ちたり木歩の忌 田岡 弘 片割月を揺らす池の面 多村 遼 村芝居終へたる人の賑やかに 弘 振舞ひ酒のうまさ格別 遼 子燕は高速道路横切りて 遼 雲の峰へと伸びるビル群 弘 ゥガウディの夢を受け継ぎ黙々と 遼 一途な愛はきっと本物 弘 魂がふれあふほどに抱きあひ 遼 焦ればとけぬ固き靴ひも 弘 解決に苦難どこまで続く拉致 弘 耳に残るは遠き潮騒 遼 神やどる月山に月冴え渡り 弘 点となりゆくシュプールの涯 遼 ひと筆に座右の銘を書き上げて 弘 猫のじゃれあふ縁の暖か 遼 花満ちて生の讃歌をたからかに 弘 悠久の地に春の曙 遼 平成14年11月6日起首12月2日満尾 WEBめぎつね座 |
☆山形連句協会会長賞 半歌仙 『果てはいづこや』の巻 香川県 田岡 弘 捌 この道の果てはいづこや草いきれ 田岡 弘 行く手はるかに峰をなす雲 多村 遼 シナリオを一気呵成に書きあげて 弘 エスプレッソをぐっと濃いめに 遼 談笑のつづく窓辺の月さやか 弘 路地の奥にもはやつづれさせ 弘 ゥやや寒に龍馬がいそぐ京の町 遼 おほいなる背に熱きまなざし 弘 いや燃ゆる恋の炎の限りなく 遼 さらさらさらと砂の曼荼羅 遼 脱出はいつのことやらこのデフレ 弘 イチかバチかで狙ふ逆転 弘 月影に冴ゆる遠吠え独り聴き 遼 友の情けにむせる燗酒 遼 閉ぢられしベストセラーはテーブルに 弘 フォークソングの流れくる苑 遼 花の雪浮かべ母なる最上川 弘 春光満ちて旅立ちの朝 遼 平成14年7月3日起首8月2日満尾 WEBめぎつね座 |
◆2003 芭蕉祭
☆特選 脇起半歌仙「春なれや」の巻 阿部 昭捌 春なれや名もなき山の薄霞 翁 砦の跡に跳ねる若駒 昭 玉椿青磁の壷に活けられて 桂 母と娘の琴の連弾 兎 天心の月のいよいよ澄み渡り 遼 レシピ通りに新蕎麦を打つ 霞 ゥ教え子が主役演ずる村芝居 昭 自ずと浮かぶ笑みに戸惑う 桂 攫われてみたいと熱く囁かれ 兎 開けてはならぬパンドラの箱 遼 池の面に身じろぎもせぬ鴨の群 霞 脱北めざし人の去り行く 昭 冷や酒の盃重ね月は友 桂 檀那寺から届くたかんな 兎 真っ黒なベンツの停まる道の駅 遼 伊賀の組紐買うがきまりで 桂 昨日今日素直に生きて花仰ぐ 霞 夢のかたちを綴る蝶々 兎 起首平成15年4月5日同30日満尾 |
☆入選 脇起半歌仙 『冬瓜や』の巻 田岡 弘 捌 冬瓜やたがひに変る顔の形 翁 月の淡きにすだく虫の音 田岡 弘 炉火恋しベストセラーに涙して 多村 遼 地味な努力のたふときを知る 佐々木栄一 子燕のやうやく慣れし滑空に 弘 沖合ひはるか浮かぶ峰雲 遼 ゥ 停まるたび土産の増えるバス旅行 一 頭のなかは君でいっぱい 弘 待ち兼ねし華燭の典はもう間近 遼 ナイスショットと囃すギャラリー 一 タマちゃんの眼の釣針は無事にとれ 弘 伊賀の銘酒で憩ふひととき 遼 物陰に忍者の消えて冴ゆる月 一 降誕祭に響くオルガン 弘 学舎の煉瓦造りもなつかしく 遼 炎と語る窯変の妙 一 花浴びて見失ひたる宙の蒼 弘 風やはらかに靡くスカーフ 遼 起首平成15年5月12日同6月5日満尾 FAX文 音 |
◆平成15年みえ県民文化祭
☆最優秀賞 半歌仙「ボトルシップ」の巻 聖五月ボトルシップの旅立てり 多村 遼 大平原をわたる薫風 城 依子 棟上げに槌音高く谺して 小山百合子 煉羊羹は少し分厚く 阿部 昭 天金の書に輝きの増す良夜 齋藤 桂 文化祭へと急ぐ若きら 遼 ゥすれ違ひざまの挨拶爽やかに 依 眼下に見ゆるアテネ空港 百 円柱の丘に女神の笑みたたへ 昭 夢をいざなふ熱き抱擁 桂 愛の巣をゆらす余震のきりもなく 遼 猫のじゃれつく反古の原稿 依 凍月に水輪ひろがる河童淵 百 有事法案泥縄の感 昭 健診の前だけ禁酒禁煙を 桂 卒寿の母を祝ふとこぶし 遼 ぼんぼりに家紋の透ける花の門 依 かごめかごめの唄も朧に 百 起首平成15年5月14日6月13日満尾 於インターネット |
◆すてきな三句賞
(とよた市民キャンパス連句まつり2003・すてきな三句募吟ー主催 豊田市・桜花学園大学他)10月30日31日
☆選者特賞(矢崎藍) 秒針加速進む昨今 ねぼけフクロウ 恋をしたアインシュタイン光なり イーノ 君に向かってあかんべえして Ray (03雅仙「天神」の巻 Ray) |
☆俳諧寒菊堂賞(岡本星女) 我もこうして物思うなり(吾亦紅) はやお 脛に疵もつ身も坐して寺の縁(ミモザ) 桂 シャツのボタンがひとつずれてる(牡丹) 霞 (02連句KUSARI花賦物 bQ1228 斎藤恵子) |
☆ 俳諧寒菊堂賞次点 (岡本星女) 犬は男のベストフレンド 小町 打算などない愛以外求めない カンちゃん 澄んだ夜空に舞い落ちる葉 聖きよみ (00連句KUSARI bV028 渡邉正和) |
☆大野鵠士秀逸 薔薇の枝には薔薇の花咲く 兎 親友の赤い唇目をそらし Katchi ハートの奥にぽつり焦げあと Ray (03連句KUSARI bQ6530 Ray) |
☆大野鵠士秀逸 BGMのトーン落として ふるふる 葬儀屋のもっともらしいアナウンス たつみ 一目でわかる親子兄弟 桂 (01連句KUSARI bP2314 山寺辰巳) |
☆ 原田千町秀逸 ゆったりとクルージングの独り旅 蕗 女神の笑みは自由たたえて 小晴 戦の好きな男を産んだ悔い 麦 (00連句KUSARI bT115 多村遼) |
☆佛渕健悟秀逸 かすかに響く時計台の音 小晴 シドニーの春を尚子が駆けぬける ミャーママ 綿毛のゴールたんぽぽの笑み 小太郎 (連句KUSARI bT736 多村遼) |
☆ 佛渕健悟秀逸 白いひかりが戯れる海 風 故郷の青い地球に帰りたい 雨乞い小町 茄子と胡瓜の馬は並んで 小晴 (02連句KUSARI bP7900山根敬子) |
☆宮下太郎秀逸 海をみおろす草萌ゆる丘 晴 遠くから遍路の鈴の聞こえきて たつみ 母のレシピで煮てるいかなご 桂 (02連句KUSARI bQ2366 斎藤恵子) |
☆ 山地春眠子秀逸 ユリイカ互いの唇の上 あおゆき クォヴァディスと君は最後につぶやいた カンちゃん 時雨降る夜駅の改札 Ray (02連句KUSARI bQ1302 Ray) |
大野鵠士入選 「夢判断」を読んでため息 道草 舵取りは貴女まかせの愛の船 キリマンジャロ シーツの海をすべる指先 みのり (02連句KUSARI bQ2856 田岡弘) |
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大野鵠士入選 野にあればアラブの馬の逞しく 小晴 国を幾つも越えるモンスーン 麦 通じないことば顔立ち似ていても 桂 (00連句KUSARI bS851 多村遼)4 |
大野鵠士入選 老猫と人生の刻分かち合い ニャン 大樹となりて花は盛りに キリマンジャロ おかえりと言われたような春の空 カンちゃん (01年連句KUSARI bW567渡邉正和 |
近松寿子入選 裏切りをなじる言葉は胸に秘め みのり 上手に嘘をつける寂しさ カンちゃん 卓上に一輪紅い冬の薔薇 桂 (02連句KUSARI bQ0647渡邉正和) |
近松寿子入選 幾万の骸を抱いて海光る ミャーママ 大本営の史跡松代 たつみ こどもらの背に降り注ぐ蝉しぐれ ミャーママ (01連句KUSARI bP1303 山寺辰巳) |
原田千町入選 億光年の防人の歌 小町 今日もまた宇宙戦艦発進す 雪兎 愛をたくさん持って行かなきゃ みのり (02連句KUSARI bP6268 小山百合子) |
原田千町入選 斜面に実るオリーブの影 風 目覚めよと呼ぶ声がする夢の中 道草 銃の世界のまだおわりなき 不用之助 (連句KUSARI bQ6330 生方卓)981 |
原田千町入選 抽き出しに2年暮らした部屋の鍵 とろっぺ ナチの追っ手がドアの外まで 蕗 神様はイツ眠りから目覚めるの? カンちゃん (03連句KUSARI bQ7687 渡邊正和)1027 |
佛渕健悟入選 ほうたるの命をかけたこの一夜 キリマンジャロ 燃ゆる柔肌つつむ羅 兎 指先が結ぶホクロの点と線 ええ一 (02連句KUSARI bQ1997 田岡弘) |
佛渕健悟入選 ミケの行方を手相見に聞く 紫 空ビンも兵器も埋まる防砂ダム 道草 子々孫々にツケをまわして ひわ (03連句KUSARI bQ8322 藤井ミイ) |
宮下太郎入選 大寒に耐えて列島弓なりに キリマンジャロ 握り返した霜焼けの指 ええ一 かあさんの温もり今も懐かしく 晴 (02連句KUSARI bP5485 田岡弘) |
宮下太郎入選 自然と共生ねらう万博 蕗 海や空森や大地は誰のもの カンちゃん 遊行の旅の一遍の影 たつみ (00連句KUSARI bS766 渡邊正和) |
山地春眠子入選 拉致調査団平壌に着く たつみ 闇深く激しさを増す虎落笛 桂 大鍋で炊く鰤と大根 麦 (02連句KUSARI bQ2252 山寺辰巳) |
山地春眠子入選 テーブルの上滑る絵葉書 カンちゃん 吹く風に秋が近いと知らされて 桂 やさしく馬を洗う少年 晴 (03連句KUSARI bQ6210 斎藤恵子) |
山地春眠子入選 うつらうつらと春の一日 霞 ふらここで行ったり来たり黄泉の国 雨乞い小町 招待状は封を切らずに 麦 (02連句KUSARI bP7918 山根敬子) |
◆第17回国民文化祭とっとり
☆入選 半歌仙「絵双六」の巻 岩手県 小山百合子捌 山賊に出遭ってしまふ絵双六 小山百合子 影燦々と揺れる繭玉 多村 遼 街角にトランペットの響くらん 阿部 昭 自販機で買ふ電車の切符 百 月の客待ちきれず注ぐ純米酒 遼 入れた襖に猫がじゃれつく 昭 ゥ磨崖佛蔦の紅葉を襷掛け 百 いつか海へと巡る敦煌 遼 寄り添ふて噂広がる船の旅 昭 ラストダンスで誓ふ再会 百 伏魔殿去りゆく人の刺し違へ 遼 西部戦線何事もなし 昭 夢色の薄翅かげろふ月に透き 百 祖父の背中に眠る祇園会 遼 公達の家系を誇るたいこもち 昭 茶柱立ちしことは内緒に 百 裂帛の気合花散る武道館 昭 巣づくり励む軒のつばくろ 遼 起2002/1/26首2002/2/5於インターネット文音 |
☆入選 半歌仙「冬麗や」 茨城県 城 依子 捌 冬麗や鳩の声降る石だたみ 城 依子 苑の隅には白き侘助 多村 遼 健やかに八十路の髪を結い上げて 山寺たつみ 日々の楽しみEメールとか 齋藤 桂 貴腐ワインとくとくとくと良夜なり 遼 山のふもとの穴に入る蛇 依 ゥべい独楽の話は尽きず湯治宿 桂 奥の廊下に見たる幻 み 小悪魔に翻弄されているわたし 依 君助手席にポルシェ発進 遼 新婚のパリの土産はユーロ札 み 川面を渡る鐘は厳か 遼 夏の月いにしえよりの堂庇 桂 親鹿に餌をねだられており 依 ポスターの笑顔に笑みを返す嬰児 桂 きりりと佇てる緒方貞子氏 依 花爛漫一期一会の友ありて み 春の砂丘に描く風紋 遼 起2002/1/24 尾2002/2/8 於インタネットBBS |
☆入選 半歌仙「風花や」の巻カリフォルニア山根じゅりあ捌 風花や山の便りを華やかに 山根じゅりあ 身じろぎもせぬ沼の寒鯉 城 依子 ホルン吹く少年の夢果てもなし 多村 遼 街の広場にサーカスが来る あ 地球儀をゆっくり廻す月の卓 遼 土瓶蒸しもう出来上がる頃 子 ゥ色と識違いを問うて残る菊 あ 戸惑いながらくぐる枝折り戸 子 モロッコへ片道切符懐に 遼 ピロートークで習うフレンチ 町 母方の奔放な血が疼くらん 子 纏わる紐の固き結び目 遼 夏の月朽ちた祭壇密林に 町 野営テントで友と酌み交う 子 ひたむきなNGOに期待寄せ 遼 中吊り広告並ぶ地下鉄 町 花爛漫そろりそろりと太郎冠者 子 呼子鳥啼く倭まほろば 遼 起首 2002/1/28 満尾2002/2/20於インターネットBBS |
☆入選 半歌仙 「棟木割く」 長野県 山寺たつみ 捌 棟木割く寒のもどりや人の声 山寺たつみ 里の厨につくる蕗味噌 齋藤 桂 たおやかに舞う初蝶を目で追いて 城 依子 特急電車わたる鉄橋 多村 遼 月まどか風も和みて眠る湖 桂 絵筆を置けば炬燵恋しく み ゥハロウィンにハリーポッター仮装の子 遼 威風堂々路次のボス猫 子 風邪ですとためらう君に熱い接吻 み 新妻残し遺跡調査へ 桂 土塊の言葉あれこれ聞きたくて 子 いのちをつつみ続く混沌 み 百合匂う月の昇りし山の端に 子 亡き友偲ぶギヤマンの盃 遼 何時かしらロシア民謡口ずさみ 桂 澱みを廻り笹舟のゆく み 御守りは蘇民将来花の寺 遼 あちらこちらで励む畑打 子 起首2002/2/13満尾2002/3/7於インターネット文音 |
☆入選 半歌仙「馬魂碑」の巻 岩手県 小山百合子 捌 馬魂碑のうしろ渦巻く雪解川 小山 百合子 梢を揺らし辛夷咲く丘 多村 遼 春炬燵ぽつんと独り沙汰もなし 山根じゅりあ 厚さ手ごろな本を枕に 生方 涼 客眠る窓に月さすバス旅行 山寺 たつみ 今年酒酌む村の若衆 棚町 未悠 ゥ伯林は「千と千尋」の芸術祭 遼 タロットカード息つめて引く 子 妻の背に密かな恋の物語 涼 古傷ひとつまだ疼いてる あ 発掘の土器の破片に謎の種 悠 次の教授は僕が本命 み 青頸は夢うとうとと湖の月 あ 夜啼き蕎麦屋の不意に現れ 遼 朴歯下駄ならべいつもの柔道部 子 醜の御楯となりし友垣 み ショパン弾くペンションの窓花吹雪 悠 東風吹きなべて命革む 涼 2002/3/6 起首2002/4/11満尾於インターネットBBS |
☆入選 半歌仙「海の門」の巻 三重県 多村 遼 捌 清明や海の門にある神の島 多村 遼 乗込鯛のはねる舟板 山根敬子 春障子新築祝いにぎやかに 城 依子 ガーデニングに思い廻らし 遼 未来図にひと色添える月明かり 敬 人を吐き出すやや寒の駅 子 ゥ脈々と暖簾うけつぐ走り蕎麦 遼 奥大山に名水を汲む 敬 いとおしい女の平癒に願をかけ 子 耳朶の翡翠は永久の契りと 遼 オペラ座は幕開きを待つ桟敷席 敬 羽ばたきやまぬ蝙蝠の群 遼 夏の月少年の影真っ直ぐに 子 爆撃の無いあすは来るのか 敬 鍵穴の向こう蕭条たりし凍て 子 こつこつ綴る古裂ちりめん 遼 連覇なるタイガーウッズ花の笑み 敬 グラス触れ合う陽炎の丘 子 2002/4/5 起首 2002/4/19満尾 於インターネット文音 |
◆2002平成連句文芸賞
入選 歌仙「テディベア」の巻 城 依子 捌 梅雨入や窓に寄り添うテディベア 依子 ボールがぬれる紫陽花の陰 たつみ 出版の記念の集いはれやかに 桂 敏腕記者も服を誂え 遼 街角のポスト黙って呑む月光 み 山のふもとの深みゆく秋 子 ゥ 初猟に高ぶる犬をなだめつつ 遼 ゆるびし靴のひも締め直す 桂 還暦が氷川きよしの追っかけに 子 抱き合う二人降りる緞帳 み 宙の涯ブラックホール増え続け 遼 月の雪林寂々として 桂 臘八の接心済みし僧の髭 み まとめてぐいとマルチビタミン 子 そこ退けと長距離トラックひた走る 遼 潮の香りを運ぶ朝風 桂 花びらを肩先に受け深呼吸 み 東踊りに誘われており 子 |
ナォ春興を友と分け合うティールーム 桂 世界に最たる長寿国とは 遼 にっこりと年金削る財務相 み あんぱんかじり綴る論文 子 洗い髪束ねし君のまぶしくて 遼 夢か現か青蚊帳の中 桂 怨霊と一騎打ちする陰陽師 子 鬼無里に残る京の町の名 み 鯉はねて池に水輪のひろごりし 桂 遠く聞こえる子等の歓声 み 熟成の美酒なりきょうの月高く 遼 えのころ草をなぶる指先 子 ナゥ冬支度あれこれ母に訊きながら 遼 沓ぬぎ石に雀きており 桂 トリックの構想を練る散歩道 子 生き甲斐となる余技のマジック み 新しき雪洞ともり花の宿 桂 若布かぐわし再会の膳 遼 平成14年6月13日起首 同9月4日満尾於インターネットBBS |
◆第16回国民文化祭 ぐんま2001
入選 半歌仙「菫色なる」の巻 衆議判 遠き日や菫色なる夜の底 小町 並木をわたる凍解の風 小晴 縄のれん焼蛤を大皿に 鳥 母がこまめにファックスをくれ 町 学園の鳩群らがりて昼の月 晴 自画像仕上げさあ美術展 鳥 紫苑咲くフランス窓によぎる影 町 シャボンの匂う髪は乱れて 晴 何もかも捨てた恋なの結ばれず 鳥 苔むすままの崖の観音 晴 永遠を魔法のランプに閉じ込める 町 地震あちこち何の前触れ 鳥 ボランティア額の汗も拭わずに 晴 葭簀に月の忍びこむ部屋 町 譲られし結城紬も懐かしく 鳥 畦道駈ける犬はのびやか 晴 吊り橋に降り注ぎたる花吹雪 鳥 時の彼方にかかる初虹 執筆 2001年2月22日起首 5月3日満尾インターネット文音 |
◆2001平成連句競詠→ インターネット連句賞 KUSARI100句
◆芭蕉祭 優秀
半歌仙 「桜かな」の巻 Web BBS めぎつね座 捌 キツネスタッフ さまざまのこと思ひ出す桜かな 芭蕉翁 虻のうなりの耳にひととき 藍 山笑ふガレージセール開かれて ミャーママ スパイス棚にハーブぎっしり 雨乞小町 横向きの自画像を描く月今宵 蕗 一輌電車通るやや寒 麦 ゥ珊瑚草能取の沼を赤く染め 目吉 君は手を振る逆光のなか マ 映画観てあとはひたすら歩いたね 町 老いて知りたる恋の哀切 藍 イスラムの祈りの響く石の家 麦 片目の猫がすり寄ってくる マ 月凍り文字化けしてるE-Mail 蕗 冬の林檎とぺティナイフと 町 遺伝子の二重螺旋を売る男 々 みんなで乗れば怖くない舟 麦 大花火今邯鄲の夢さめて マ ビアージョッキに盛り上がる泡 蕗 2000年3月1日起首 3月10日満尾 |