とよた連句サロン・栄連句サロン・合同特別連句会 (主催 桜花学園大学生涯学習研究センター・ころも連句会)2006,5,16)
                                                   →矢崎藍の連句わーるどtopへ 
  名古屋の栄サロン・とよた連句サロンが合同で名古屋で連句会をひらきました。折から片山先生の連句集『ペガサス』ご出版お祝いをかねて
  すてきな四人の先生においでいただくことができました。いずれも蕉風伊勢派の伝統をつぐ、現代連句界のリーダーでいらっしゃいます。
  連衆には両サロン、ころも連句会のほか、名古屋の尋牛会、豊田の竜神連句会・kusariのかたも(三重・京都・東京から)かけつけ、院生も参加。
  真剣な、そしてなごやかな、まさに充実の午後をすごしました。 
  先生方ありがとうございました。きらきらと連句のおもしろさにに目覚めたメンバーです。これからも、どうぞよろしくご指導くださいますよう。
     
   T ペガサス座   歌仙    「 旅心 」の巻     捌 片山多迦夫 (賀雀庵四世・山猫庵)
   U アンドロメダ座 二十韻   「夢の翼」の巻     捌 原田 千町 (臥猫庵)
              表合せ八句 「珊瑚の吐息」      々 
   V 白鳥座      源心   「ペガサスの」 の巻  捌 佛淵 健悟(南州庵)
   W カシオペア座  歌仙    「翡 翠 の」の巻   捌 坂本 孝子(緑華亭)
   X めぎつね座   歌仙    「樟若葉」の巻     捌 矢崎 藍 (めぎつね^-^) 

                以上    2006年5月16日首尾 於 桜花学園大学名古屋栄キャンパス
   Y オマケ作品です!読んでください 文音歌仙 「媾曳」の巻  健悟・多迦夫・千町・孝子・藍

Tペガサス座
  
 歌仙「 旅心 」の巻    捌 片山多迦夫   
旅心初ほとヽぎす聴きしより       片山多迦夫
 みどりなす山天翔ける馬        稲垣 渥子
待ってインターネットで遊ぶらん   西田 一枝
 隠元豆は母の好物           谷本 守枝
村消えてもみぢの名所今は市に     斉藤 桂子
 新校名を筆太に書く        草笛  奏
  モナ・リザの微笑の奥の謎を解き        
 ゼウスも知らぬ恋のからくり         
めらめらと焼けぼっくいの燃え出して      
 形見となりし火消し半纏           
政治屋の未必の故意は罪深く          
 扉の外に滑瓢(ぬめりひょん)など       
尾張には鬼殺してふ辛口も       
 宅急便は翌日に着く             
買物の客で賑はふ新空港          
 うぐいす嬢≠ヘ死語となりたる       
あの戦さにと語り継ぎ          
 風吹き揺るる葱坊主たち          
 ナオ  コーランの響き消えゆく路地の奥        
 海の男は半年も留守            
いつも混む涯の港の古酒場           
 黒猫のそり立ちあがるとき          
来る筈のない人が来る下駄の音        
 高くついたる愛の代償            
世界中小型ジェット機乗り廻し      
 玉の輿とて籠の中なり            
鈴虫は息も切らさず鳴き続け          
 キッチンの床檸檬ころがる        
十三夜スクランブルの交差点          
 不眠症病む基地の生活            
 ナウ 切れ切れの夢なれどその夢を追ひ        
 映画はいつもシルバー割引          
笠智衆着ながしの肩侘しげに         
 お化け煙突土手に陽炎ふ           
釣竿を振れば落花のひとしきり         
 波きらきらと上る若鮎            
平成十八年五月十六日 於 桜花学園大学 栄キャンパス 首尾

 『ペガサス』発刊お祝いの花束。
 連句集には、健悟・千町・孝子・藍それに
両さろん・ころものメンバーも登場します。昭
和、平成の名作ですよ。ぜひご一読を!
詳細は→連句情報。























歌仙「旅心」の巻留め書き
 このたびの私の発句は天の賜物です。旅立つ前
日に杜鵑の"初音"を耳にして即応したのですか
ら・・・・。
 なつかしい方々や初めて逢った多くの連衆の人
達と歓談できた一泊二日の旅を感謝しています。
 一期一会とは、俳諧にこそふさわしい言葉ではな
いでしょうか。
 短時間ながら巻きあげた歌仙行は、ひととおり出
来上ったと思いますが、まだまだ校合の必要がある
かと思います。同座した連衆にこの言葉を贈って
「旅心」の巻の所感とします。(多迦夫)
Uアンドロメダ座
 
   二十韻 「夢の翼」の巻     捌 原田千町
初夏や夢の翼の風に乗る           原田 千町
 麦藁帽のゆれる公園          由川 慶子
先生はメトロノームを卓上に         多村  遼 
 静かなブームバレー靴買ふ         黒木美代子
望の月正客にして盆手前           石川  葵
 こほろぎの鳴く庭の片隅         倉知 武好 
いつしかに合歓は実となる弥勒堂         
 やさしいけれどマザコンの彼          
一豊の女房志願手鍋提げ                  
 罠にかかりしやせた野兎
ナオ 寒稽古体育館に声響く                
 イナバウアーを競ひ合ふ子等           
誤字脱字開き直って句座にあり          
 積極的に無常感秘め             
現れし勝利の女神月涼し             
 新婚旅行これで三度目                
ナウ しゃっくりがとんと止まらずどやされる          
   オールドバーに流氷を入れ             
ふうわりとは一都を包み込む           
 日差しあたたか自転車の列           
 平成十八年五月十六日満尾 於 桜花学園大学 栄キャンパス
 
表合せ八句  「珊瑚の吐息」         捌 原田千町
 
   グッピーと珊瑚の吐息泡のぼる            千町
幾千年を転生の夏                慶子 
旅衣四季折々に選ぶらん               遼 
用もないのにまた電話する            美代子 
惚れ薬インターネットで検索し              葵
鬼女ともなりて狂ほしく燃え             遼 
花吹雪けふのひと日を降り止まず          武好 
おぼろのと語る鉄塔               執筆 
  平成十八年五月十六日満尾  於「春帆楼」(松坂屋十階)


留め書き

 この度は、片山多迦夫様「ペガサス」の
発刊お祝いの席にお招きを頂きまして有難うござい
ました。藍様にも多迦夫様にも久し振りにお目にか
かれましたも嬉しく懐かしく存じました。
 また、ころも連句会のお盛んなこと、明雅先生がおい
でになられましたら、どれほどかお喜びなられたこと
でしょう。素晴らしい御連衆に恵まれまして、記念す
べき貴重な作品を得ることができました。
 二十韻は明雅先生の御発案になるものです。お初めて
の方も多いと伺い、二十韻一巻と、時間が余りましたので
表合せもしてみました。
 一応の校合をいたしたつもりですのでお送りいたします。
障りなどお目につきましたらお教え
くださいませ。
天候不順の折どうぞご自愛下さいませ。(千町)

V白鳥座」  源心「ペガサスの」    捌 佛淵健悟
ペガサスの飛来を知るや時鳥 佛渕 健悟
 夏めく街に集ううたびと 間瀬 芙美
踊場に黒豆の味分け合うて  恒川 暁子
 機織虫の隅にちぢまる 竹内たつ子
月光の形崩さぬ池の面 繁原 敏女
  合せ鏡に映る人かげ 伊藤 良重
いつもより磨きをかけたハイヒール 渡辺 洋子
  ABよりもO型が好き      良
巴里行きの機影小さく雲の内       つ
 棗の中に響く凩      悟
狐狸兎みんな出て来い日向ぼこ        良
 最初はグーと握る坊さん      美
花びらの破れ紙子に貼りついて             つ
ナオ  又も朝餉に出す棒鱈                 美
北国へ風柔らかき列車旅                洋
 カード払いでポイントを貯め            同
少年のサイドスローで投げる帽             敏
 秘策検索電脳の奥                  美
問いもせぬ歳を答うる月暑し              つ
お化け屋敷でつかまれる腕              洋
ふろしきで包みし恋はお持たせに            美 
 ハイクに続くボンサイの波             良
道端の縄跳の声数を増す                暁
 四温日和のいつか雪暗                悟
ナウ ベランダに洗濯物の忘らるる           暁
 企業戦士の末は主夫とか               美
花盛り名古屋城趾に杖を留め              敏
 壺中の夢は朧おぼろに     執筆
  平成十八年五月十六日首尾於  桜花学園大学 栄キャンパス 



留め書き

 賀雀庵先生の連句選集『ペガサス』のご上梓を祝
う連句会に参加させていただき、久しぶりの名古屋
の空気にたくさん刺激を頂いて返りました。お心尽く
しに感謝しております。 
 連句一巻は、清書したものを前に、付合の時間とコ
ースを俯瞰してみますと、一座していた時とはまた違
った思いも湧いてくることと思います。
 新しい発見もあり反省点もありというところですが、
色々な思いを又次回のお席で生かして頂きたいと思
います。
 拙句「四温日和の急に北風」は「風が好きですね」と
ご指摘ありました。なるほど「凩」「風やわらかき」「北
風」と二八句の中に三度も出てますね。 ここは「四
温日和のいつか雪暗」に。  
 挙句は初め「五合徳利」。似たようなことになります
が「壺中の夢」にさせて頂きます。
 酒を飲んでは世俗を忘れる楽しみでもあり、あの折
の楽しい時間、俳諧の別天地でもありというところです。
夢はいつかは覚めるからこそ一座の一期一会が嬉しく
有り難くもあります。
又お会い出来る日を楽しみに致しております。(健悟)






名古屋 蕉風発祥の地石碑
Wカシオペア座
   歌仙「翡 翠 の」  捌  坂本孝子  
翡翠のかすめし日々の速さかな    坂本  孝子
 新樹さざめくふたたびの風 西脇  智子
万華鏡覗ける子等の声あげて 武藤美恵子
 ポッケの中に小銭じゃらじゃら  長坂  節子
横丁のはわづかにいびつなる 福井  直子
今年の酒の出来ばえをki利き 森岡しげる
 書割のほつれ繕ふ村芝居          上島登志彦
メール履歴が修羅場招いて 
 ジーンズの臍のあたりの恋ぼくろ
誰も知らない筈の真相
雪つもる落人の里しんしんと  仝
 ハングル学ぶ凍月の窓             
ひと蹴りにひと振りにみる愛国心        
 けふのごはんのうまいしあわせ       
スキップに鍵が鳴りますランドセル      
 山の姿の残照に映え           
の影女同志の立話             仝 
 籠の底には白ス干など          
ナオ 次期総理狙ふ面々春闌けて            
 腰に合はせる舶来の椅子          
ユトリロの灯りが滲むカフェテラス   
 鬼女ともならず街の天使は         
好きだわと声かけられて五十年         し 
 香り漂ふ朴の木の花            
デイパック夢を詰め込み夏の旅       
 笑ふ鬚面人情も濃く            
鍋囲む先輩後輩ずわい蟹            美 
 三州狐切り盛りの店            
合併市棚田にありしいくつ        
 IT企業株のやや寒             智  
ナウ エレベーター降りて巷の虫を聴く       仝 
絹ごし豆腐掌にふるへたる         
糸屑をあつめて楚々と母の針        
 もったいないが地球語となり         智 
大寺の鐘に舞ひたつ飛花落花          孝 
 どこまでも追ふ佐保姫の歌        

平成十八年五月十六日首尾於  桜花学園大学 栄キャンパス 


留め書き
句の面白さに触れた最初は芭蕉七部集の「狂句木枯」
の巻。その魅力に憑かれてからかれこれ三十年ほどに
なりましょうか。
 芭蕉が名古屋に草鞋をとき、初めて一座を捌いたとき
は恐らく真剣勝負であったに違いありません。
 この度、片山多迦夫先生の「ペガサス」のお祝いにお
招き頂き、嬉しさと怖さの中に度胸を決めて伺ったので
した。
 連衆の西脇智子さんとは二度目の対面。彼女が初め
て東京の猫蓑会に出席された時私の一座で、以来再
開を約しながら、空しくも時が流れてしまいました。
でもその再開の感動をがっちりと脇句に受け止めて下さり
こんな嬉しいことはありません。
 個性豊かな三州女狐一座の連衆は芭蕉の頃さながら
捌に挑まれ、真剣勝負とは申せませんが、お陰様で「翡
翠の」の一巻楽しく首尾することができました。
 矢崎藍先生と連衆皆様のお心尽くし感謝し、益々のご
活躍、ご発展をお祈り申し上げます。








歌仙「欅若葉」の巻    捌  矢崎 藍
  ペガサスの降り立つ欅若葉かな      矢崎 藍

 梅雨の晴れ間に伸びるクレーン    近藤 富子
  少女たちまっすぐな脚駆けだして    山内多美子
 下校の合図しまる校門        土肥 暢子
夕月にまだひいている電子辞書     徐 艶
 栗羊羹でお茶にしましょう      田中 絢子
蟷螂の三角形がにらみおり        
 診断表に要観察と         
アルペジオ弾くほど胸の苦しさよ      
 風に舞いこむ彼の恋文          
七色のテープ残して発つ港         
 魔法の修行黒猫を連れ          
保父さんは坊ちゃん育ち月冴えて     
 ボーナスで買う小さな鉢植え       
楽天に勝ち安堵する楽天家        
 夢をうかべて流れゆく川        
指先に二ひら三ひらこぼれ        
 小説すこし書きし永き日         
ナオ 休耕田空気を裂いて雉の声       山口元子
 首相候補は誰になるらん         
ちり紙の交換に出す古紙の山        
 携帯もてば罪も少々          
ひと待ちて遠き海鳴り聞いている      
 抱きしめられて牡丹散る夜       
五ミリ角蚊取線香燃え尽きぬ        
 寄席の下足があくびふたあつ      
かつぶしのおどるきしめん行こまいか    
 いい日旅立ち幟はためき               
大屋根を月光すべる永平寺         
 軒の干柿頃合いになり          
ナウ 乳色の温泉あふれ草紅葉          
 戦さを語りやがて卒寿に         
腰痛のおかげ喧嘩もできなくて       
 蝌蚪のひしめく庭の大甕        
ままごとの家族が囲む花見酒           
 爆竹はぜて万物の春           
     平成十八年五月十六日首尾  於  桜花学園大学 栄キャンパス

 末座のめぎつねにおつきあいくださいましてありが
とうございます。コン。楽しかったですね。
いつもお会いする方、ひさしぶりに逢えた方、ネットで
しか知らなくて初めてお会いできた方。
 みんな不思議なご縁でのきょう。
 ナウの花前まできて、おたまじゃくしを火鉢にいれる
べきか甕にいれるべきか迷いましたね。「一度に生ま
れるとぎっしりなのね」「そうそう、お互い乗っかっちゃう
くらいね」 こんな話してたんですよねー。
 そうそう、徐艶さんは院生で前期俳諧の授業に出て、
とても関心をもってくれたので、今回は、実作の経験をし
てもらったのです。ウラの花の句がとてもすてきにできて、
このあと、二胡の演奏会のときにこの句を披露したら、大
拍手をうけたそうです。
 




















Y 文音歌仙 歌仙「媾曳」の巻                    fax文音
   媾曳の町ほろほろと蟷螂生る      健 悟 
  口笛吹けば君が草笛 多迦夫
  デッキチェア寛ぎの時ゆるやかに     千 町
  操舵室には海図天気図          孝 子
三毛の雄とんと出てゆく朧月
  春闘もまた烏鷺のたたかひ      
利休忌のけふはいっさい待った無し    
  衣擦れの音香る白檀          
 胸元を開けばそこは雪のはら     
  むさぼる愛をわらふもののけ     
 LPは湖面のやうに回りつつ        悟 
  戦後のことは泡盛の泡       
 シーサーとを眺めて語る夜      
  証拠あるかと直るやや寒        
 残る蚊のぱちんと打たれましたとさ   
  政界再編料亭は混む         
 もっこすへいごっそうより花便り   
  東風さわさわと散髪の衿      
ナオ  夏隣り市の胡椒を掌にこぼし      
  大雁塔に夕日傾く           
 清げなる声に混じれるしはぶきも     悟 
  天井桟敷既に満員           迦 
 あまりにも急な変転これは夢      
  あんたが好きよ無一物でも      
ラブコールかき消すほどの蝉時雨    
  真っ白になる岩風呂の中      
 次の旅世界遺産の熊野路へ      
  広がるままにジーンズの穴     
 稼ぐ阿呆遊ぶ阿呆に月今宵       
  鰯を焼いて米寿なりけり      
ナウ  ほうほうと稲雀追ふ声のして
  二胡弾かせればプロなみの技    
 酔人の車窓の眠り心地よげ      
   重たくなりし膝の嬰児         
 往く年のカウントダウン遠花火      
  大オリオンに祈る平安          執筆
  平成十八年六月二十日 起首 平成十八年八月二九日 満尾
留め書き
 お客様の先生方みなさんに捌きをお願いしました
ので、二次会 の席で、ひさしぶりの短冊がまわり
ました。その後、半歌仙、歌仙 と二巻がファクス文
音でまかれました。
  どうぞごらんくださいませ。